カワミドリ

カワミドリ（藿香）

カワミドリ（学名：Agastache rugosa）は、シソ科カワミドリ属に分類される多年草です。ハーブのアニスヒソップと同属で、植物全体に強い芳香を放ち、長く伸びた紫色の花穂が特徴的です。古くから薬草としても知られ、様々な用途に用いられてきました。

名称の由来と別名

カワミドリの和名の由来は残念ながら不明です。植物学者である牧野富太郎の著書『新牧野日本植物圖鑑』にも記載されていません。しかし、「排草香（ハイソウコウ）」という別名も持っています。
学名の「Agastache」は、ギリシャ語の「穂」を意味する言葉に由来し、その特徴的な花穂の形状を表しています。英語では「Korean mint」（朝鮮ミント）と呼ばれています。

カワミドリの花言葉は「最後の救い」です。

分布と生育環境

カワミドリは、日本国内では北海道から九州にかけて広く分布しています。国外では、朝鮮半島、中国大陸、シベリア東部など、比較的涼しい地域に分布しています。日当たりの良い山地に自生し、やや湿った林の中や、川岸、沼の縁など、水辺に近い場所を好みます。

特徴

カワミドリは、草丈40cmから100cm程度に成長する多年草です。茎は四角形で直立し、上部で枝分かれします。植物全体にハッカのような独特の強い芳香があります。

葉は対生し、卵状心臓形をしています。葉身はやや薄く、長さは5cmから10cm、幅は3cmから7cm程度です。葉の先端は尖っており、基部は心形、または茎の上部につくものは円形になります。葉の裏面には微細な白毛が生えており、葉の縁には鈍い鋸歯があります。葉柄は1cmから4cm程度です。葉を揉むと、ハッカのような清涼感のある香りがします。

花期は8月から10月にかけてです。茎の先に長さ5cmから15cm、幅約2cmの花穂をつけ、多数の紫色の小さな唇形花を密集させて咲かせます。萼は筒状で、5つに裂けており、裂片は長く尖っています。花後も紫色を保ちます。花冠は紅紫色で、長さは8mmから10mm程度です。上唇はやや直立して浅く2つに裂け、下唇は3つに裂けており、中央の裂片が大きくなっています。雄蕊は4本あり、そのうち2本が長く、雌蕊とともに花の外に長く突き出て目立ちます。美しい花を咲かせるため、観賞用としても楽しまれています。

果実は分果で、扁三稜状の倒卵形をしており、長さは約1.8mmです。

利用法

カワミドリの葉や茎は、薬草として利用されます。乾燥させた葉には芳香があり、生薬名として「藿香（かっこう）」という名前が当てられていますが、本来の藿香とは異なる植物です。日本では排香草とも呼ばれています。風邪薬などの漢方薬として、茎、葉、根を乾燥させたものが用いられます。

民間療法では、6月から7月にかけて茎の上部を切り取り、水洗い後に吊るして陰干ししたものが、解熱薬や健胃薬として利用されてきました。1日量5gから15gの藿香（排香草）を、水500ccで半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する方法が知られています。

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