カンガ

カンガ：東アフリカの「しゃべる布」

カンガ（kanga、またはkhanga、別名レソ(leso)）は、タンザニアやケニアをはじめとする東アフリカ地域で、衣服や風呂敷などとして広く用いられている一枚布です。鮮やかな色彩と多様な模様が特徴で、日常生活に欠かせないアイテムとなっています。

カンガの概要

カンガは、幅約110cm、長さ約150cmの綿プリント生地でできています。デザインには、縁取り模様の「ピンド(pindo)」と中心模様の「ムジ(miji)」があり、それぞれ異なる図柄が描かれています。模様のモチーフに決まりはなく、動植物、幾何学模様など、さまざまなものが用いられます。

特筆すべきは、カンガの中央にスワヒリ語で書かれた格言やことわざ、流行語などの言葉「ジナ(jina)」が添えられている点です。このジナは、着用者の気持ちを表すこともあり、カンガが「しゃべる布」と呼ばれる所以となっています。カンガは通常、2枚繋がった状態で販売されており、購入者はそれを半分に裁断し、端を縫い合わせて使用します。

カンガは民族衣装と呼ばれることもありますが、その歴史は19世紀中頃と比較的浅く、特定の民族に限定されるものではありません。スワヒリ地方発祥であることからイスラム教と関連付けられることもありますが、キリスト教徒も着用しており、宗教的な意味合いを持つものでもありません。

カンガの歴史

カンガの起源は、19世紀中頃にザンジバル島やモンバサ近辺の女性たちが、ハンカチ用の布を縫い合わせて大きな布として利用したことにあると言われています。当時、レソ(leso)と呼ばれていたこの布が、やがて1枚布として製品化されました。布の模様がホロホロチョウ（スワヒリ語でkanga）の羽模様に似ていたことから、kangaと呼ばれるようになったとされています。現在でも、モンバサ周辺ではカンガのことをレソと呼ぶことがあります。

20世紀前半には、イギリス、オランダ、イギリス領インド、ドイツ、日本などの企業がカンガの生産に携わっていました。1955年から1969年にかけては日本が最大のカンガ生産国であり、1970年代からは中国企業が最大の生産国となっています。

カンガの着装

カンガは、厳密には「着る」というよりも「纏う」または「巻く」布です。多くの女性は、ワンピースなどの服の上から、1枚を腰に巻いてエプロンスカートのように、もう1枚を頭に被るか、肩にショールのようにかけます。着こなし方は非常に多様で、ワンピース型、ブラジャー型、ヘッドバンド型、巻きスカート型、ケープ型など、さまざまな方法があります。

東アフリカでは古くから、マサイ族に見られるような肩口で一枚布を結んで垂らしたり、マントのように着る着装法がありましたが、現在の形が整ったのは19世紀中頃と比較的新しいものです。

カンガの文化的な意味合い

カンガは、単なる衣服としてだけでなく、さまざまな文化的な意味合いを持っています。ジナは、個人の感情やメッセージを伝える手段として使われることがあり、また、贈り物としても用いられます。カンガの柄やジナには、それぞれ意味やメッセージが込められており、着用者の個性や社会的な立場を表すこともあります。

まとめ

カンガは、東アフリカの人々の生活に深く根ざした、多機能で魅力的な布です。その鮮やかな色彩、多様な模様、そしてジナは、人々の感情や文化を表現する手段として、現在も大切にされています。


参考文献

竹村景子「「超民族衣装」カンガの今とこれから：スワヒリ地方のにおける着衣の実践」『着衣する身体と女性の周縁化』、恩文閣出版、2012年、ISBN 9784784216161。
杉浦未樹 著「「アフリカンプリント」物語―布と衣とファッションのグローバル・ヒストリー」、上智大学アメリカカナダ研究所, イベロアメリカ研究所 編『グローバル・ヒストリーズ―「ナショナル」を越えて』上智大学出版、2018年。

関連項目

キテンゲ - カンガより厚めの布地。主に服を仕立てるために用いられるが、カンガのように巻いて用いることも多い。
アフリカン・ワックス・プリント

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