カンサス (バンド)

カンサス (Kansas)

カンサスは、アメリカ合衆国出身のプログレッシブ・ロックバンドです。1970年代のアメリカン・プログレ・ハードシーンから登場し、アメリカン・プログレの伝統を色濃く受け継いだ音楽を展開しました。1980年代にはポップ路線へと移行しましたが、1990年代以降は往年のスタイルに原点回帰しています。

概要・略歴

オリジナル・ラインナップ期（1973年 - 1980年）

1969年、ケリー・リヴグレンを中心に、前身バンド「ホワイト・クローヴァー・バンド」を結成。メンバーチェンジを繰り返しながら、カンザス州を拠点に活動しました。1972年頃、フィル・イハートがイギリスへの音楽留学で全盛期のプログレッシブ・ロックに触発され、バンドは同路線へと転向。1973年にバンド名を「カンサス」と改名し、本格的な活動を開始しました。

1974年、1stアルバム『カンサス・ファースト・アルバム』でメジャーデビュー。翌年には2ndアルバム『ソング・フォー・アメリカ』、3rdアルバム『仮面劇』を発表し、これら初期の3枚のアルバムは、いずれもゴールド・ディスクを獲得しました。

1976年には、4thアルバム『永遠の序曲』を発表。収録曲の「伝承 (Carry On Wayward Son)」がシングルヒットし、アルバム自体も大ヒットを記録。1995年までに400万枚を売り上げました。1977年発表の『暗黒への曳航』からは、「すべては風の中に (Dust In The Wind)」が大ヒット。アルバムも1995年までに400万枚のセールスを達成しました。

ライブ活動も積極的に行い、毎年のように100本以上のツアーを敢行。1978年には、1977年から1978年の3本のツアーで収録した音源を基に、2枚組のライブ・アルバム『偉大なる聴衆へ』を発表しました。

その後も、1979年に『モノリスの謎』、1980年に『オーディオ・ヴィジョン』と、コンスタントにアルバムをリリース。1980年1月には初の来日公演も開催しました。

スティーヴ・ウォルシュ脱退 - 活動停止（1981年 - 1984年）

1981年、スティーヴ・ウォルシュがソロ活動のため脱退。バンドは新ボーカルとしてジョン・エレファンテを迎えました。新生カンサスとして1982年にアルバム『ビニール・コンフェッション』を発表し、先行シングル「Play The Game Tonight」がヒットしました。

1983年のアルバム『ドラスティック・メジャーズ』は、よりポップな路線を追求した作品でしたが、商業的な成功には至らず。バンドの象徴的存在であったヴァイオリンのロビー・スタインハートと、中心メンバーのケリー・リヴグレンが脱退し、翌年バンドは活動を停止しました。

活動再開 - ウォルシュ再度の脱退（1985年 - 2014年）

1985年、スティーヴ・ウォルシュが復帰し、リチャード・ウィリアムス、フィル・イハートの3人を中心に、ギタリストにスティーヴ・モーズを迎えるなど、新たな編成で活動を再開。1986年には復活アルバム『パワー』を発表しました。以降、オリジナル・メンバー以外は流動的なメンバー構成で活動を継続します。

2000年には、オリジナル・メンバー全員でのリユニオンが実現し、14thアルバム『サムホエア・トゥ・エルスホエア』を発表しました。

2008年には、未発表音源を大幅に追加した発売30周年記念盤の『偉大なる聴衆へ』をリリース。2009年にはオーケストラと共演したライブDVD『There's Know Place Like Home』をリリースしました。これには旧メンバーのケリー・リヴグレンと、スティーヴ・モーズがゲスト参加しています。

2013年、旧メンバーが客演したオリジナル・ラインナップで、結成40周年記念ライブを開催。しかし、2014年には中心メンバーのスティーヴ・ウォルシュが再び脱退しました。

新体制 - 以降（2014年 - 現在）

2014年、ウォルシュの後任として、ロニー・プラット(ボーカル)とデヴィッド・マニオン(キーボード)が加入。2016年には、16年ぶりの15thアルバム『暗黙の序曲』をリリース。ザック・リビ(ギター)が加入し、7人編成となりました。またこの年、『永遠の序曲』の発売40周年を記念し、同作品を完全再現したライブ・ツアーを開催しました。

2018年には、5thアルバム『暗黒への曳航』の発売40周年を記念し、同作品を完全再現したライブ・ツアーを開催。同年末、デヴィッド・マニオンが脱退し、トム・ブリスリンに交代。2021年4月にはザック・リビが脱退し、6人編成に復帰。同年7月には創設メンバーであったヴァイオリニスト、ロビー・スタインハートが逝去されました。

2023年、結成50周年記念ツアーを開始。デヴィッド・ラグスデールは参加せず降板し、プログレバンドStratospheeriusのリーダーであるジョー・デニンゾンが新加入しました。ツアーではオリジナルメンバーであったケリー・リヴグレンとデイヴ・ホープが客演しています。

2024年、フィル・イハートが心臓発作を起こしツアーから離脱。代役は過去にサポート経験があるエリック・ホルムクイストが臨時で務め、さらにザック・リビの復帰が決まりました。

音楽性とその影響

曲作り・サウンドの傾向としては、ロックンロール志向の強いスティーヴ・ウォルシュと、プログレッシブ・ロック志向の強いケリー・リヴグレンの2人が中心でした。デビュー当初から、スティーヴとロビーのツイン・ボーカル、リチャードとケリーのツイン・ギター、ケリーとスティーヴのツイン・キーボード、そしてロビーのヴァイオリンを加えた斬新なメンバー構成で、独自の音楽性を展開しました。

プログレとしては、イエスやジェネシスといったシンフォニックで構築的なバンドの影響を受けています。ハードロック的でアグレッシヴなリズムセクションや、バラエティに富んだボーカル、マルチなリード楽器による重層的なアンサンブルを武器とし、フォーク、ヘヴィ・ブルーズ、カントリー、ラテンなど、多様な要素を取り入れたサウンドも特徴です。

アメリカにおけるプログレッシブ・ロックのパイオニアとして、スティクス、ジャーニー、ボストンらと並び称され、後世に大きな影響を与えました。

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