カンザスシティ・ミュニシパル・スタジアム

ミズーリ州カンザスシティにかつて存在したカンザスシティ・ミュニシパル・スタジアムは、地域のスポーツシーンにおいて重要な役割を担ったスタジアムでした。野球とアメリカンフットボールのプロフェッショナルチームが本拠地として使用し、多くの歴史的な瞬間を目撃しました。

このスタジアムの起源は、マイナーリーグのカンザスシティ・ブルースが使用した球場に遡ります。当初は比較的小規模な施設でしたが、メジャーリーグベースボール（MLB）チームの誘致を機にその姿を変えていきます。1954年のシーズンオフ、フィラデルフィア・アスレチックスがカンザスシティへの移転を決定したことで、ミュニシパル・スタジアムは大規模な改修を必要としました。メジャーリーグ公式戦の開催基準を満たすため、特に観客席は2層構造に拡張されるなど、抜本的な整備が施されました。この改修を経て、1955年からカンザスシティ・アスレチックスが本拠地球場として使用を開始しました。アスレチックスは1967年シーズンまでこの地でプレーしました。

さらに、スタジアムはアメリカンフットボールのプロリーグにも対応するため、再び改修が行われます。1962年にはアメリカン・フットボール・リーグ（AFL、現在のNFL・AFCの源流の一つ）のダラス・テキサンズがカンザスシティに移転し、チーム名をカンザスシティ・チーフスと改称しました。これに伴い、ミュニシパル・スタジアムは野球だけでなく、アメフトの試合も開催できる兼用スタジアムへと生まれ変わりました。チーフスは1963年から1971年までの間、このスタジアムをホームグラウンドとしました。アスレチックスがオークランドへ移転した後、1969年からは新設されたMLBチームであるカンザスシティ・ロイヤルズが本拠地を引き継ぎ、1972年まで使用しました。このように、ミュニシパル・スタジアムはMLBとNFL、二つの主要プロスポーツリーグのチームが同時に、あるいは連続して本拠地とするという珍しい歴史を持ちました。

ミュニシパル・スタジアムは、その歴史の中でいくつかの記憶に残る出来事の舞台となりました。野球の試合では、1947年7月10日にクリーブランド・インディアンスの投手ドン・ブラックが、当時まだこの球場をマイナーリーグの本拠地としていたカンザスシティ・ブルースを相手にノーヒットノーランを達成しました（インディアンスが3対0で勝利）。また、メジャーリーグの本拠地となってからは、1960年7月11日にMLBオールスターゲームの第1戦が開催され、ナショナルリーグがアメリカンリーグを5対3で破る熱戦が繰り広げられました。さらに、1965年9月8日には、アスレチックスの遊撃手バート・キャンパネリスが、メジャーリーグ史上初めて1試合でチームの全9つの守備位置すべてに就くという珍しい記録を樹立しました。これは、野球の戦略やファンサービスの一環として行われたもので、球史に残るユニークな出来事として語り継がれています。

しかし、時が経つにつれてスタジアムの老朽化は避けられなくなりました。プロチームの本拠地としての要求水準を満たし続けることが困難になり、1967年には野球とアメリカンフットボールそれぞれのための専用スタジアムを新たに建設することが決定されました。カンザスシティ・チーフスは1972年から、カンザスシティ・ロイヤルズは1973年から、それぞれ新しい専用スタジアム（アローヘッド・スタジアム、カウフマン・スタジアム）へ移転しました。役目を終えたミュニシパル・スタジアムは、1976年に惜しまれつつ取り壊されました。その跡地は現在、市民のための公園として整備され、かつて熱狂的な声援が響き渡った場所は、静かな憩いの空間となっています。ミュニシパル・スタジアムは、カンザスシティのスポーツ史における一つの章を閉じましたが、その記憶は今も多くの人々の心の中に残っています。

もう一度検索