カンタ カナリート 〜風よりもかろやかに〜

イタリア生まれのさわやかな楽曲「カンタ カナリート 〜風よりもかろやかに〜」は、原曲『Canta Canarito』に日本語詞をつけた作品として知られています。この曲は、1972年4月にNHKの人気音楽番組『みんなのうた』で初めて紹介され、多くの人々に親しまれました。軽快なメロディーと希望に満ちた歌詞が特徴です。

この日本語版を手がけたのは、原詞をイタリア語で書いたダンテ・パンツーティ氏（通称ダンパ）、その詞を繊細に日本語に訳した片岡輝氏、作曲は原曲と同じくヴィルジリオ・パンツーティ氏、そして番組での放送にあたり、楽曲を一層魅力的に彩る編曲を横山菁児氏が担当しました。そして、その美しいメロディーに乗せて歌声を披露したのは、日本を代表する女性デュオ、ザ・ピーナッツでした。彼女たちの透明感あふれるハーモニーが、楽曲の持つ明るい雰囲気を際立たせています。

イタリア本国でのオリジナル版『Canta Canarito』は、長年にわたり親しまれてきた名曲であり、ルチア・アルティエリやニッラ・ピッツィといった、当時イタリアで高い人気を誇った著名な歌手たちによって歌い継がれてきました。その魅力的な楽曲が、日本で新たな息吹を得て紹介された形となります。

「カンタ カナリート」というタイトルは、イタリア語で「カナリアが歌う」という意味を持ちます。この曲は、そのタイトルが示す通り、カナリアの美しい歌声に焦点を当てています。歌詞は、春の訪れを告げるカナリアの軽やかで陽気な鳴き声に乗せて、生命の息吹を感じさせる季節の到来や、人々の心に宿る温かい愛や希望といったテーマを、爽やかに歌い上げます。まるで青空の下を風のように駆け抜けるかのような、聴く人に明るく希望に満ちた気持ちをもたらす、心地よい一曲と言えるでしょう。

歌唱を担当したザ・ピーナッツは、『みんなのうた』という番組の歴史においても、初期から重要な役割を果たした存在でした。番組が始まったばかりの草創期から積極的に歌唱を務め、数々の名曲を世に送り出し、番組の認知度向上と発展に大きく貢献しました。この「カンタ カナリート 〜風よりもかろやかに〜」は、彼女たちが1963年8月に歌唱した『木曽節』以来、およそ9年ぶりとなる『みんなのうた』への出演作となりました。そして、さらに約2年後の1975年に惜しまれつつグループとしての活動を終え、芸能界から引退したため、この「カンタ カナリート」が結果的に、ザ・ピーナッツにとって『みんなのうた』で歌唱した最後の楽曲となったのです。長年にわたる彼女たちの活動の、そして『みんなのうた』での足跡における、まさに一つの節目を示す、歴史的な意味合いを持つ楽曲と言えるでしょう。

『みんなのうた』で放送された多くの楽曲と同様に、「カンタ カナリート 〜風よりもかろやかに〜」も、その明るいメロディーとザ・ピーナッツの歌声によって、多くの人々に愛されました。しかしながら、残念ながら現在までに番組での再放送や、公式なメディア（例えば番組のベスト版DVDなど）への収録は実現していません。そのため、リアルタイムで番組を見た世代以外にとっては、この曲を耳にする機会は限られているのが現状です。

しかし、楽曲そのものの音源は、現在も入手可能です。ザ・ピーナッツが所属していたレコードレーベルであるキングレコードから発売された、『みんなのうた』に関連する様々なコンピレーション盤（レコードやCDなど）の中には、彼女たちが歌唱した「カンタ カナリート」が積極的に収録されています。特に、2004年に同社からリリースされた豪華なボックスセット『ザ・ピーナッツ メモリーズBOX』の中にも、この楽曲の貴重な音源が含まれています。これらの音楽ソフトを通じて、時を超えてザ・ピーナッツによる「カンタ カナリート」の伸びやかな歌声と、春のように爽やかなメロディーを今なお楽しむことができるのです。これは、この曲のファンにとって、またザ・ピーナッツのファンにとっても、大変嬉しい事実と言えるでしょう。

「カンタ カナリート 〜風よりもかろやかに〜」は、イタリアと日本の音楽的感性が見事に融合したユニークな楽曲であり、ザ・ピーナッツの天性のハーモニーが最大限に生かされた一曲です。『みんなのうた』における彼女たちの最後の足跡としても記憶されるこの曲は、単なる子ども向けの歌にとどまらず、幅広い世代の心に響く普遍的な魅力を持っています。春の息吹と愛の喜びを歌うそのメロディーは、聴くたびに私たちの心を明るく、そして風のように軽やかにしてくれることでしょう。この曲は、日本の歌謡史、そして『みんなのうた』の歴史の一ページを飾る、忘れられない一曲です。

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