カンタベリー物語 (映画)

1972年、イタリアを舞台に描かれた大胆なカンタベリー物語

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督による1972年公開の映画『カンタベリー物語』（原題：I racconti di Canterbury）は、傑作オムニバスコメディとして知られています。これは、パゾリーニ監督が手がけた「生の三部作」の第二作であり、前作『デカメロン』（1971年）、そして後続作『アラビアンナイト』（1974年）と並ぶ重要な作品です。

本作は、14世紀のイギリスの詩人ジェフリー・チョーサーによる同名小説を原作としています。しかし、単なる原作の忠実な再現ではなく、パゾリーニ監督独自の解釈と表現によって、原作の24話の中から厳選された8話を、大胆に、そしてユーモラスに映像化しています。

映画は、チョーサーの『カンタベリー物語』に収録されている様々な物語を、現代的な視点とセンセーショナルな演出で再構築しています。裸体やセックスシーン、スラップスティックな喜劇といった要素をふんだんに盛り込み、当時の観客を驚かせました。また、原作からの大胆な改変も特徴的で、特に『托鉢僧の話』などは、原作とは異なる解釈で描かれています。

個性豊かなキャストとロケ地

映画には、ヒュー・グリフィス、ラウラ・ベッティ、ジョゼフィン・チャップリンなど、国際的な俳優陣が出演しています。パゾリーニ監督自身もチョーサー役で出演しています。それぞれの俳優が、個性的なキャラクターを見事に演じ分けています。

ロケ地には、イギリス各地の美しい風景が選ばれています。バトル、ケンブリッジ、カンタベリーといった歴史的な都市に加え、チッピング・カムデン、ロムニー・マーシュ、フェア・フィールドの聖トマス・ベケット教会、ラヴェナム（またはラベンハム）、レイヤー・マーニー・タワー、セント・オシス修道院、ウォリック、ウェルズといった場所が、映画の雰囲気をさらに豊かにしています。これらの多様なロケーションは、中世イギリスの雰囲気と、現代的な感覚が融合した独特の世界観を作り出しています。

高い評価と、現代への影響

『カンタベリー物語』は、公開当時から高い評価を受け、第22回ベルリン国際映画祭では金熊賞を受賞しました。パゾリーニ監督の斬新な演出と、俳優たちの熱演、そして美しいロケ地が相まって、観客に忘れられない印象を与えたと言えるでしょう。

本作は、単なる古典文学の映画化にとどまらず、現代社会への鋭い批評性も内包しています。中世の物語を通して、人間の欲望や矛盾を、ユーモアを交えながら描き出しています。この点は、現代においても多くの共感を呼び、再評価されています。

『カンタベリー物語』は、パゾリーニ監督の代表作の一つであり、映画史に残る傑作として、現在も高い評価を得ています。その大胆な映像表現と、原作へのユニークなアプローチは、後世の映画作家にも大きな影響を与え続けています。原作を知っている観客も、そうでない観客も、楽しめる作品と言えるでしょう。

主要登場人物

ジャニュアリ：ヒュー・グリフィス
バースの女房：ラウラ・ベッティ
パーキン：ニネット・ダボリ
悪魔：フランコ・チッティ
メイ：ジョゼフィン・チャップリン
老人：アラン・ウェッブ
チョーサー：ピエル・パオロ・パゾリーニ
ジェンキン：トム・ベイカー
郷士：ヴァーノン・ドブチェフ
免罪符売り：デレク・デッドマン
戦士：エイドリアン・ストリート
托鉢僧：ニコラス・スミス

これらの情報は、映画『カンタベリー物語』をより深く理解するために役立つでしょう。

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