カンティガ

カンティガは、中世西洋音楽の一形態であり、主にイベリア半島で発展した単旋律の歌曲を指します。一般に頌歌とも呼ばれます。

中でも特に有名なのは、13世紀のレコンキスタ時代にイベリア半島を統治したアルフォンソ10世（賢王）が編纂した「聖母マリアのカンティーガ集」（Cantigas de Santa María）です。この曲集は、「聖母マリア頌歌集」とも呼ばれ、中世の音楽と文化を知る上で非常に重要な資料となっています。

「聖母マリアのカンティーガ集」の手稿本は、ガリシア語で書かれた聖母マリアへの賛歌と、彼女による奇跡の物語を中心とした詩で構成されています。これらの詩には、当時のトルバドゥール（吟遊詩人）による抒情歌の影響が見られます。また、ネウマ譜によって記譜された400曲以上の音楽が含まれており、楽曲の多様性も魅力の一つです。手稿本には、当時の生活や信仰を伝える美しい細密画も含まれています。

音楽史的な観点から見ると、カンティガの音楽は、詩の源流であるトルバドゥール抒情歌よりもさらに古い要素を含んでいると考えられています。また、イベリア半島の音楽文化は、アラブ音楽の影響を強く受けており、カンティガにもその影響が見られます。

もう一つの重要なカンティガの曲集として、「モンセラートの朱い本」（Llibre Vermell de Montserrat）があります。この曲集は、スペインのカタルーニャ地方にあるモンセラート修道院に伝えられた10曲からなる、素朴で美しい楽曲で構成されています。こちらもアラブ音楽の影響を受けていると考えられています。

カンティガは、中世イベリア半島の文化、宗教、音楽が融合した独特な芸術であり、現代においてもその魅力は失われていません。研究者や音楽家によって、楽曲の解釈や演奏が行われ、その歴史的価値が見直されています。

関連事項

賛美歌
イムヌス
アラブ音楽
聖母マリアのカンティガ集

外部リンク

* The Cantigas de Santa Maria（英語サイト）：「聖母マリアのカンティーガ集」の楽譜が画像として閲覧できます。

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