カンテレ

カンテレ (kantele)

フィンランドの代表的な民族楽器であるカンテレは、ツィターの仲間に分類される撥弦楽器です。その起源はフィンランドの叙事詩『カレワラ』に由来し、老賢者ワイナミョイネンが神話の中でこの楽器を発明したとされています。カンテレは、多様な弦数（5弦から40弦まで）を持ち、音楽の用途やスタイルによって使い分けられます。

成立過程

カンテレの伝説的な創造は、『カレワラ』の第40章に描かれています。物語では、ワイナミョイネンが北方のポホヨラに向かう途中、大カマスの背に舟が乗り上げ、困り果てた彼がその魚を切り裂き、村人に料理を頼むシーンがあります。村人たちが捨てた骨を見て、彼は楽器作りのアイデアを思いつきました。大カマスの顎骨を使い、ヒイシの馬の毛を弦に張った最初のカンテレが完成しますが、戦争の最中に湖に沈んでしまいます。

失われた楽器を求めて悲しむワイナミョイネンは、樺の木に出会い、この木を使って新しいカンテレを作り上げます。彼は弦を結ぶネジを探し、さらには恋人の髪の毛を弦にして、最終的に新しいカンテレが出来上がります。彼がこの楽器を演奏すると、周囲の生き物や植物がその音色に感動し喜びに包まれました。

歴史的背景

カンテレの歴史は不確かで、2000年前から存在したとも、1000年未満であるとも言われています。有名な1698年に作られた5弦カンテレが現存しており、これはフィンランド国立博物館に収蔵されています。カンテレは、古くから民俗音楽や歌の伴奏楽器として用いられ、叙事詩や伝説、遊び歌などの演奏において重要な役割を果たしてきました。

しかし19世紀に入ると、フィドルが主流になる中でカンテレの利用は減少します。特に1830年代までカンテレが主に演奏されていたカレリア地方では、次第に珍しい楽器になっていきました。その後、カンテレ奏者たちがコンサートを行うことによって再び注目され始めます。アレクシス・キヴィは、「カンテレ・クレータ」と呼ばれる奏者を詩の中で称賛しました。

1900年代に入ると楽器の改良が進み、音程を変化させる機構を持ったコンサートカンテレが取り入れられました。これによりカンテレは芸術的な可能性を広げ、電気カンテレの開発も行われました。音楽教育にも取り入れられ、フィンランドの学校においてカンテレの普及が進みました。

構造と奏法

現在のカンテレは、多くの板材から構成され、39絃に及ぶものまであります。伝統的には5弦であったカンテレも、演奏会用のものは全音階に調律され、さまざまな音楽スタイルに対応できるようになっています。演奏方法も多様で、指でつま弾いたり、ミュートしたりするスタイルが存在します。

各地域で独特な奏法が発展し、特にサーリヤルヴィやペルホンヨキラークソでは独自のスタイルが生まれました。

日本での受容

日本では1978年にカンテレの存在が広まり、その後留学生たちによって地域での普及が進みました。特にフィンランドからの楽器演奏のワークショップが人気を集め、カンテレに関する学びの機会が増えてきました。アニメ『ガールズ&パンツァー劇場版』でもカンテレが取り上げられ、さらにその魅力が紹介されました。

主な演奏者と類似楽器

フィンランドの奏者マルッティ・ポケラや日本のあらひろこなど、カンテレの演奏家は国内外に多様に存在します。さらに、バルト海沿岸地域にはラトヴィアのクォクレやリトアニアのカンクレスなど、類似の楽器も見られます。

カンテレはその独特な音色と深い歴史を誇る楽器として、現代においても人々に愛され続けています。

もう一度検索