全音階

全音階とは

全音階（ぜんおんかい、diatonic scale）は、西洋音楽において非常に重要な役割を果たす7音音階の一種です。オクターブの音程を、5つの全音と2つの半音で構成されており、この音程の配置が、長音階や短音階といった基本的な音階を生み出す基盤となっています。その起源は古代ギリシャの「ディアトノン」というテトラコルドに遡ります。

全音階の構造

全音階は、以下の規則的な音程の配列で構成されています。

全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音

具体的には、ハ長調（Cメジャースケール）を例にとると、以下のようになります。

ド（全音）レ（全音）ミ（半音）ファ（全音）ソ（全音）ラ（全音）シ（半音）ド

この音階の各音には、「ドレミ」という階名が与えられていますが、これはグイード・ダレッツォによって考案されたものです。

長音階と短音階

全音階は、どの音から開始するかによって、異なる性格の音階を生み出します。

長音階：全音階を「ド」から開始すると、明るく開放的な響きを持つ長音階となります。
短音階：全音階を「ラ」から開始すると、暗く落ち着いた響きを持つ短音階となります。

音度と機能

音楽理論では、音階の各音に「度」という概念を当てはめ、音の役割を明確にしています。長音階と短音階では、同じ音でも異なる名前が付いてしまうため、音度を用いることで、共通の機能を持つ音を識別することができます。音度は、スケールの最初の音を「i度音」とし、順に「ii度音」、「iii度音」と数えます。

特に重要な機能を持つ音としては、以下のものがあります。

i度音：主音（トニック）と呼ばれ、音階の基準となる中心的な音です。安定感があり、楽曲の終止感を決定づけます。
iv度音：下属音（サブドミナント）と呼ばれ、主音に向かう前の、やや不安定な音です。楽曲に変化や緊張感を与えます。
v度音：属音（ドミナント）と呼ばれ、主音への強い引力を持つ音です。楽曲におけるクライマックスや転調で重要な役割を果たします。
vii度音：導音（リーディング・トーン）と呼ばれ、主音に半音で導かれる音です。楽曲の流れをスムーズにし、終止感を強調します。

その他の音度には、以下のものがあります。

ii度音：上主音（スーパートニック）
iii度音：上中音（ミーディアント）
vi度音：下中音（サブミーディアント）
主音の長2度下のvii度音：下主音（サブトニック）

全音階に関連する音楽理論の要素

全音音階：すべての音程が全音で構成される音階。全音階とは異なる音の配列を持ちます。
半音階：すべての音程が半音で構成される音階。全音階の構造とは異なります。
音名：各音に付けられた名前。例：C, D, E, F, G, A, B。
階名：音階の各音に付けられた名前。例：ド, レ, ミ, ファ, ソ, ラ, シ。
ダイアトニック・コード：全音階の音から作られる和音。楽曲の和声構造を理解する上で重要な概念です。

全音階は、西洋音楽の基本的な構成要素であり、楽曲の旋律、和声、形式を理解する上で不可欠な知識です。その規則的な音程の配置が、長音階や短音階といった多様な音楽表現を可能にしています。

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