カンブリア爆発

カンブリア爆発

カンブリア爆発とは、古生代カンブリア紀（約5億4200万年前～5億3000万年前）に、現在の動物の基本的な分類である「門」レベルで多様な生物が突如として出現したように見える現象を指します。カンブリア大爆発とも呼ばれます。

概要

20世紀前半までの認識

カンブリア紀の地層からは、サンゴ、貝類、腕足類、三葉虫など、高度に分化した多細胞動物の化石が発見されます。しかし、それ以前の先カンブリア時代の地層からは、動物の化石がほとんど見つかりませんでした。この化石記録のギャップは、長らく謎とされてきました。

チャールズ・ダーウィンは、進化論の中で生物進化が徐々に進むと考えましたが、先カンブリア時代に単純な多細胞動物の化石が見つからないことを問題視しました。この謎を説明するために、地層の欠落、化石になりにくい生物の存在、小型で軟体性の生物であったため化石化しなかったなど、様々な仮説が提唱されました。

発展

その後の研究で先カンブリア時代の化石が発見され、カンブリア紀の化石産地の調査が進むにつれて、謎はさらに深まりました。エディアカラ生物群のように、先カンブリア時代の大型生物は、必ずしも現在の動物の祖先とは見なせないことが判明しました。カンブリア紀の化石群（バージェス動物群など）の研究から、脊索動物（魚類を含む）など、より多様な生物が同時期に出現していたことが明らかになりました。現在では、コケムシ動物門を除く全ての動物門がカンブリア紀に出現した可能性があり、その祖先を特定できていません。

カンブリア爆発の原因

従来、カンブリア爆発は、カンブリア紀初期に生物の体制が一斉に出そろった現象とされてきました。スティーヴン・ジェイ・グールドは、カンブリア紀に生物の異質性が爆発的に増加し、その後減少したと主張しました。彼は、この現象が偶然か、自然選択では説明できないメカニズムによるものだと考えました。

分子遺伝学の進歩により、遺伝子の多様化はカンブリア爆発の約3億年前に起こっていたことが判明しました。このことから、カンブリア爆発は短期間の大進化ではなく、化石記録上の多様化であるという考え方が主流になりました。

リチャード・ドーキンスは、カンブリア紀以前に特別な進化現象が起こり、生物の体制が出そろったという考え方に批判的です。彼は、脊椎動物と無脊椎動物の根本的な違いは、長い時間をかけて異なる方向に進化してきた結果であり、当初から異なる体制を持っていたとは考えにくいと主張しています。

アンドリュー・パーカーは、カンブリア爆発の原因として、眼を持つ生物の誕生による淘汰圧の高まりを指摘する「光スイッチ説」を提唱しました。これは、眼を持つ生物（三葉虫）が捕食に有利になり、眼を持たない生物に対する淘汰圧が高まったという説です。眼と硬組織を獲得した生物が捕食に対抗できるようになったことで、化石記録が短期間で多様化したように見えると説明しています。

パーカーは、スノーボールアースの終結とカンブリア爆発の間には時間的な隔たりがあるため、直接的な関係はないと考えています。しかし、多細胞生物はスノーボールアースの間も生存し、隔離された環境で捕食能力を発達させました。これにより、エディアカラ生物群やバージェス動物群のような多様性が形成され、捕食と被捕食の生存競争が激化したと考えられます。

バージェス動物群のアノマロカリスやオパビニアなどの大型捕食動物の出現とともに、カンブリア爆発の際には硬い外骨格を持つ動物が増加しました。エディアカラ生物群は、新たに出現した捕食動物によって絶滅したという説もあります。

関連項目

* バージェス動物群

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