カンボジア特別法廷

カンボジア特別法廷について

カンボジア特別法廷（英語：Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia、略称ECCC）は、1975年から1979年にかけての民主カンプチア時代にクメール・ルージュ政権が引き起こした深刻な人権侵害や虐殺を裁くことを目的に設立された特別な法廷です。法廷は2001年に設立され、2006年から正式に運営が開始されました。「混合法廷」としての特性を持ち、カンボジア国内の法律と国際法を適用しています。

沿革

カンボジア特別法廷は、クメール・ルージュ政権下での大規模な人権侵害の責任を追及する動きの中で設立されました。1970年代後半、クメール・ルージュはポル・ポトを中心に政権を握り、約170万から200万人が虐殺されたとされています。1979年のベトナムの侵攻によってクメール・ルージュ政権は崩壊しましたが、彼らの行った犯罪に対する法的責任を問う声が長年にわたり取り上げられてきました。

特別法廷の設立には重要なステップがありました。カンボジア政府は1997年、国連に対して過去の人権侵害に対処するための支援を要請しました。これを受けて国連は1999年に専門家グループを派遣し、クメール・ルージュの指導者たちに対する法的手続きの実施が正当化される証拠が存在すると認めました。2001年には特別法廷設置法が制定され、カンボジアと国連の協定のもと法廷の組織や運営が確立されました。

特別法廷の運営

カンボジア特別法廷は、国内と国際双方の判事から構成されています。第一審裁判部にはカンボジアの判事3人と国際判事2人が所属し、最高審ではカンボジアの判事4人と国際判事3人が担当します。特別法廷では、各種の重大犯罪が対象とされ、特に人道に対する罪やジェノサイドに関する行為が中心となっています。

初めての事件は、かつてトゥール・スレンで政治犯を監禁していたカン・ケク・イウ（別名ドット）は、2010年に有罪判決を受け、禁錮35年の判決が下されました。この判決は軽すぎるとの批判もありましたが、その後の上訴で最高刑の終身刑に変更されました。第二事件では、クメール・ルージュの指導者たちが人道に対する罪で起訴され、いくつかの判決が下されていますが、被告たちの高齢化が進む中で裁判が続けられています。

課題と成果

特別法廷は多数の課題に直面しています。内部での汚職疑惑や政治介入の報道が相次ぎ、裁判の独立性に疑問が投げかけられることもあります。しかし、特別法廷の設立と裁判の実施自体は、カンボジアの歴史における不処罰の文化を打破する重要な試みといえます。また、被害者参加制度が導入され、多くの人が裁判に参加し、その経験を共有することで、法廷における歴史的な記憶を再確認し、教育的な意義が生まれています。

カンボジア特別法廷は、国際的な法の支配を根付かせる一方で、カンボジア国内の司法能力の向上にも寄与してきました。このように、特別法廷は単なる犯罪の裁判に留まらず、社会全体の和解と再生に向けた一つの大きなステップであると評価されているのです。

もう一度検索