カーチス T-32

カーチス T-32 コンドルIIの概要

カーチス T-32 コンドルIIは、1930年代にアメリカ合衆国で開発された複葉旅客機であり、カーチス・ライト社によって製造されました。この航空機は、民間の航空会社に加えて、アメリカ陸軍でも使用され、要人輸送や爆撃機への改造が行われました。

機体の特徴

T-32は2張間の双発複葉機で、木材と金属の混合構造が使用されています。この機体の開発は1931年にスタートしました。複葉機という古典的な設計は、多くの革新が求められていた時代の流れに反するものでしたが、これはカーチス社の経営状態が厳しく、短期間でコストを抑えた航空機を生産する必要があったためです。

型式名「T-32」は、「T」が輸送機を意味し、目標としたペイロードが3200ポンド（約1451kg）であったことから名付けられました。コンドルIIという名称は、同社のB-2爆撃機コンドルの後継を示すために使われています。

エンジンと性能

本機は、空冷のライト SCR-1820-F3 サイクロンエンジン（離昇出力710馬力）を2基搭載しています。機体自体は旧式の構造ですが、新たな改良も施されています。下翼には引き込み式主脚が装備されており、大型フロートを取り付けることも可能です。また、客室内の防音性を向上させるために、エンジンナセルを胴体から離し、補機も後方に配置しました。点検は、胴体に設けられたジッパー式の点検パネルを使って簡単に行うことができます。

初飛行は1933年1月30日であり、原型機は21機製造されました。この機体は、12人が眠れる寝台機として設計され、イースタン航空やアメリカン航空での夜間旅客輸送に3年間使用されました。特筆すべきは、コンドルIIが旅客機の中で初めて寝台を備えたものである点です。

軍事利用と改造

アメリカ陸軍航空隊は、2機をYC-30という名称で購入し、要人輸送の任務にあてました。これらの機体は、燃料タンクを増設し、固定脚へと改造され、フロートやスキーも装着できるようになりました。また、1938年にアメリカの探検家リチャード・バードの南極探検に使用されたことでも知られています。

コンドルIIは、個々のモデルによっても異なる改良が行われました。AT-32シリーズでは、エンジンナセルを後方に延長してプロペラの後流を改善するなどの工夫が施されています。さらに、AT-32Dは寝台機から15座席の座席仕様に改造されました。

輸出と流通

輸出型のBT-32は爆撃機仕様で、8機が製作され、コロンビアやチリ、台湾などの航空軍で使用されました。また、CT-32は貨物用ドアを持つ軍用輸送機として設計され、数機が製作されています。

国内の航空会社では1936年末にダグラス DC-3と交替して早々と引退しましたが、輸出型は1940年代まで現役であり、特に海軍型R4C-1は1941年まで使用されていました。

各型一覧

• - T-32：寝台機、21機製造、2機がアメリカ陸軍のYC-30。
• - AT-32シリーズ：改良型が製造され、各種エンジンや構造元が異なります。
• - BT-32：爆撃機仕様 8機製造。
• - CT-32：軍用輸送機仕様、3機製造。

このようにして、カーチス T-32 コンドルIIはその時代の航空機技術の一端を担い、さまざまな運用に対応した多用途機として評価されています。

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