イースタン航空

イースタン航空の歴史：栄光と衰退

イースタン航空（Eastern Air Lines）は、1920年代後半から1991年まで存在したアメリカの航空会社です。最盛期には、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空と並び「Big4」と称されるほどの巨大な航空会社でした。

初代イースタン航空の誕生

1926年、ハロルド・フレデリック・ピトケアンによってピトケアン・アビエーションとして設立されたのがイースタン航空の始まりです。当初は、ニューヨークとアトランタ間の郵便輸送を担う航空会社でした。1929年には、ノースアメリカン・アビエーション・コーポレーションに買収され、イースタン・ディビジョンとなりました。その後、イースタン・エア・トランスポートを経て、イースタン航空へと社名を変更しました。

拡大と苦難

イースタン航空は、複数の航空会社を吸収合併し、アメリカ東海岸を中心に路線網を拡大しました。しかし、大陸横断路線の認可が得られず、経営は低迷します。この大陸横断路線の開設失敗は、後の経営にも大きな影響を与えました。

エディー・リッケンバッカーによる改革

1938年、第一次世界大戦のエースパイロット、エディー・リッケンバッカーがイースタン航空を買収し、経営改革に乗り出しました。ダグラスDC-4やロッキードコンステレーションなどの新型機を導入し、ニューヨーク-マイアミ間の高収益路線を開設、さらにカナダやバミューダ諸島へ路線を拡大しました。

しかし、1959年に競合他社がジェット機を導入する中、イースタン航空はロッキード・エレクトラを導入し、競争で劣勢に立たされます。さらに、操縦士と航空機関士の対立やストライキがサービス低下を招き、業績は悪化の一途をたどりました。

シャトル便の開設と挫折

1959年、リッケンバッカーが社長を辞任し、マクインタイヤが後任となりました。マクインタイヤは、ボーイング720やボーイング727といったジェット旅客機を導入したほか、予約不要で搭乗できる東海岸のシャトル便を開始しました。このシャトル便は成功を収めましたが、ニューヨーク-マイアミ間への拡大は失敗に終わります。

その後、マクインタイヤはアメリカン航空との合併を試みるも失敗し、1963年に辞任します。後任にはフロイド・ホールが就任しました。

大陸横断路線の開設と事故

ホールの下で、イースタン航空はディズニーワールドのオフィシャルエアラインとなり、1967年に念願の大陸横断路線の認可を得て、ポートランド、シアトル、そしてロサンゼルスへと路線を拡大します。また、マッキー・エアウェイズを買収してカリブ海にも進出しました。

1972年には、初のワイドボディ機としてロッキードL-1011トライスターを導入しましたが、就航直後に墜落事故を起こし（イースタン航空401便墜落事故）、さらに立て続けに事故を起こしたことで、イメージが悪化し、業績も悪化します。

つかの間の栄光

1975年、ホールが辞任し、アポロ8号の宇宙飛行士であったフランク・ボーマンが社長に就任しました。ボーマンは自らテレビCMに出演し、イースタン航空のイメージアップに努めました。また、労働組合との問題解決のため、利益分配制度を導入し、エアバスA300を導入して運営効率を向上させました。

ボーマンの改革により、イースタン航空は1976年から4年連続で大幅な利益を上げ、再び大手航空会社としての地位を確立しました。

規制緩和と破綻

しかし、1978年の航空[[規制緩和法]]によって、新規航空会社の参入が容易となり、イースタン航空は格安[[航空会社]]との競争にさらされます。もともとコストが高かったイースタン航空は、低運賃を武器とする格安[[航空会社]]や他の大手航空会社との競争に苦戦します。

1980年、ボーマンの後任として社長に就任したチャールズ・ブライアンは労働組合寄りの人物で、イースタン航空の業績は再び悪化しました。

業績が悪化したイースタン航空は、賃金カットや倒産したブラニフ航空から南アメリカ路線を買収するなど、再建を図りますが、1985年にはイースタン航空980便墜落事故が発生し、さらに経営が悪化します。

最終的に1986年、テキサス・インターナショナルに買収されますが、経営は好転せず、1989年に連邦倒産法第11章の適用を申請し、一部の機材や路線を売却します。ニューヨーク-ワシントンD.C.やボストン間のシャトル便も不動産王ドナルド・トランプに売却しましたが、1989年の業績は8億ドルの赤字となり、1991年1月18日にすべての運航を停止し、初代イースタン航空は幕を閉じました。

二代目イースタン航空

2009年、フロリダ州の企業グループが初代イースタン航空の商標を買い取り、2012年に二代目イースタン航空を設立しました。2015年にはチャーター航空会社として復活しましたが、経営不振に陥り、2017年にスウィフト航空に事業を譲渡しました。二代目イースタン航空は、日本の三菱航空機製ジェット機を発注していましたが、最終的に事業継続を断念しました。

三代目イースタン航空

2017年、経営破綻したダイナミック航空がスウィフト航空の出資を受け、「イースタン航空」の商標を使用し、三代目イースタン航空として再生を目指すことになりました。

イースタン航空が使用した主な機材

イースタン航空は、以下のような様々な機種を運用しました。

ダグラス DC-4
ダグラス DC-6
ダグラス DC-7B
ダグラス DC-8
ダグラス DC-9
マクドネル・ダグラス DC-10
コンベア440
ボーイング720
ボーイング727
ボーイング747-100
ボーイング757
ロッキード コンステレーション
ロッキード L-188 エレクトラ
ロッキード L-1011 トライスター
エアバスA300

イースタン航空の航空事故

イースタン航空は、多数の航空事故を起こしています。以下は主な事故の一覧です。

イースタン航空21便墜落事故 (1941年)
イースタン航空375便墜落事故 (1960年10月4日)
イースタン航空512便墜落事故 (1962年11月30日)
イースタン航空304便墜落事故 (1964年2月25日)
イースタン航空663便墜落事故 (1965年2月8日)
1965年ニューヨーク空中衝突事故（1965年12月4日）
イースタン航空401便墜落事故 (1972年12月29日)
イースタン航空212便墜落事故 (1974年9月11日)
イースタン航空66便着陸失敗事故 (1975年6月24日)
* イースタン航空980便墜落事故 (1985年1月1日)

まとめ

イースタン航空は、アメリカの航空史において重要な役割を果たした航空会社でした。しかし、度重なる経営難と事故により、その歴史に幕を閉じました。その歴史は、航空業界における競争の厳しさと、経営の難しさを物語っています。

もう一度検索