カートリビジョン

カートリビジョンとは

カートリビジョンは、1972年にアメリカで発売されたビデオカセットフォーマットで、家庭用としては最初期に登場したシステムの一つです。開発・販売は、Avcoの子会社であるカートリッジテレビジョン社（CTI）が行いました。

開発と販売

カートリビジョンは、単体ではなくテレビセットと一体型で販売されたのが特徴です。レコーダー部分はAvcoが製造を担当しましたが、CTIはアドミラル、パッカードベル、エメルソンラジオ、モンゴメリーワード、シアーズといった家電メーカーと協力し、それぞれのブランド名で製品を販売しました。特にモンゴメリーワードのテレビは、アドミラル製のシャーシが使用されていました。

最初のカートリビジョンテレビセットの価格は1,350ドルでした。当時としては高価でしたが、映画などのレンタルサービスも提供され、消費者の関心を引きました。カセットは正方形で、2分の1インチ幅のテープが互いに反対方向に収められていました。これは、ヨーロッパで販売されていたフィリップスのVCRフォーマットに似ていますが、録画時間は最大114分と異なっていました。3倍速の早送り・巻き戻し、逆再生が可能でした。

レンタルサービス

カートリビジョンの特徴の一つに、レンタルカセットサービスがありました。ユーザーはカタログや小売店を通じて映画などのカセットを注文し、宅配で受け取って視聴後返却するシステムです。『戦場にかける橋』や『招かれざる客』といった人気映画がレンタル可能でした。レンタルカセットは、家庭用レコーダーでは巻き戻しができず、一度しか見ることができませんでした。巻き戻しは、小売店に返却された後、専用の機械で行われました。その他にも、スポーツ、旅行、芸術、ハウツーなどのカセットがレンタルできました。レンタル用カセットは黒色で、家庭用カートリビジョンレコーダーでは巻き戻しが可能でした。オプションで、Eumig製の白黒カメラも発売されましたが、カラーカメラはCTIの破産により実現しませんでした。

短命に終わった販売

1970年6月にAvco社がカートリビジョンをニューヨークのコンシューマー・エレクトロニクス・ショーで発表した後、1972年6月にシアーズ、メイシーズ、モンゴメリーワードなどのデパートで最初に発売されました。しかし、販売不振のため、わずか13ヶ月後の1973年7月には生産が終了しました。倉庫に保管されていたテープは湿気によって使用不能になっているのが発見されました。

その後

1973年のカートリビジョン破産後、多くのテレビセットはレコーディング機器や部品に分解され、カリフォルニアの小売店や電子趣味家によって購入されました。一部は家庭用装置として再利用され、RFモジュレータを使用することで他のテレビセットでもビデオテープレコーダーとして使用可能になりました。カートリビジョンは、テレビ番組「What's My Line?」で1972年に実演されたこともあります。

技術的な特徴

カートリビジョンの特徴的な技術として、約120°間隔・20Hz回転の3ヘッド、3フィールドごとに2フィールドをスキップする方式が採用されていました。

まとめ

カートリビジョンは、家庭用ビデオカセットシステム黎明期に登場したものの、商業的には成功を収めることができませんでした。しかし、その技術的な特徴やレンタルサービス、そして短命に終わった歴史は、ビデオテクノロジーの発展を語る上で重要な存在です。

脚注

The Cartrivision Site
LabGuy's World page on Cartrivision
CED Magic's page mentioning Cartrivision
Video of "I Am Cartrivision", a demo video released on Cartrivision cassette to retailers
Details of a Cartrivision cassette
Cartrivision.com

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