カーブル風ポロウ

アフガニスタンの国民食：カーブル風ポロウ

カーブル風ポロウ（Kābulī polow）は、アフガニスタンで最も愛される米料理であり、国民料理として広く親しまれています。中央アジア、特にウズベキスタンやタジキスタンを含むイスラム文化圏でも広く食され、その歴史と文化を深く反映した料理と言えるでしょう。

ポロウはイラン発祥の炊き込みご飯で、日本のピラフや焼き飯の原型とも言われています。カーブル風ポロウもその系譜を受け継ぎ、長粒米、特にバスマティライスを使用するのが特徴です。米以外にも、ラム肉（マトンや鶏肉で代用することも可能）、ニンジン、そして干しブドウ（サルタナやレーズン）が主要な材料として用いられます。肉を使用しないバリエーションも存在します。

調理方法は、まずラム肉とタマネギを圧力釜で煮込み、下ごしらえをします。これは、アフガニスタンの首都カーブルが高地（標高約1900メートル）にあるため、水の沸点が低く、通常の鍋では調理時間が大幅にかかってしまうためです。ニンジンは軽く揚げておきます。次に、肉を煮詰めた煮汁で米を炊き上げます。この工程で、スパイスとしてカルダモン、クミン、ターメリックなどが少量加えられますが、全体としては繊細で上品な味付けが特徴です。インドやパキスタンの料理に比べて辛みが少ないのも、アフガン料理の特徴と言えるでしょう。

下ごしらえした肉の上に炊き上がった米を重ね、トマトを一緒に炊き込む場合もあります。このようにして、カーブル風ポロウは完成します。

カーブル風ポロウは、単なる食事という枠を超えた存在感をアフガン文化において持ちます。集会や祝祭など、人が集まる席には必ずと言って良いほど登場し、米という貴重な食材を用いることから、アフガンの人々にとって特別な意味を持つ料理となっています。かつては、若い女性が花嫁としての腕前を示す試金石として、ポロウの炊き上がりが重視されたと言われています。現代では、男性も同様の評価を受けるケースも見られます。

その起源については諸説ありますが、ティムール朝時代のトルコ人兵士が、野菜と肉を同時に効率的に摂取できる料理として考案したという伝承も残っています。

カーブル風ポロウは、香り高く、上品な味付けが魅力の料理です。圧力釜を使用する工程や、米の炊き加減など、伝統的な調理法が忠実に守られています。そして、その奥深さには、アフガニスタンの歴史と文化、人々の生活様式が凝縮されていると言えるでしょう。付け合わせには必ずサラダが添えられ、アフガニスタンの人々の生活に欠かせない、重要な料理の一つなのです。

もう一度検索