カーホップ

カーホップ（carhop）とは、ドライブインレストランにおいて、顧客の車まで料理を運ぶ接客係を指します。多くの場合、徒歩で配膳を行いますが、ローラースケートを使用するケースも見られます。このサービススタイルは、20世紀前半にアメリカでドライブインが普及した際に登場し、当時のホットロッド文化とも密接な関係がありました。

歴史

戦前

カーホップの始まりは、1921年にテキサス州ダラスで開業した「ピッグ・スタンド」というレストランに遡ります。実業家のJ・G・カービーは、自動車の普及により人々の生活が便利になるにつれて、車から降りずに食事を済ませたいというニーズが高まると予測しました。そこで、R・W・ジャクソン医師と協力してこの店をオープンし、男性の従業員が車まで料理を運ぶサービスを開始しました。

同時期には、A&Wレストランの創業者であるロイ・アレンが、カリフォルニア州サクラメントでルートビアスタンドを開店し、「トレイボーイ」と呼ばれる係が同様のサービスを提供していました。配膳係の呼び名は店舗によって異なっていましたが、「カーホップ」という言葉が文献に初めて登場したのは1923年のことです。

戦後

第二次世界大戦が始まると、戦地へ送られた男性の代わりに女性のカーホップが登場しました。多くの店は、集客のために魅力的な女性をカーホップとして採用しました。制服も重要な要素であり、軍服や航空会社の乗務員、宇宙服、チアリーダー風など、顧客の目を引く様々なデザインが用いられました。

しかし、ファーストフード店が普及するにつれて、カーホップを置くドライブインは減少していきました。1948年、カリフォルニア州サンバーナーディーノでドライブインを経営していたマクドナルド兄弟は、カーホップを廃止してセルフサービスを導入しました。その背景には、カーホップが顧客との無駄話に時間を費やし、必ずしも売上につながらないという問題がありました。

1960年代にドライブスルーが登場すると、カーホップの数はさらに減少しました。現在では、ソニック・ドライブインのような一部のチェーン店がカーホップによるサービスを続けているほか、ベビーブーム世代のノスタルジーを刺激するために、あえて古い接客スタイルを採用する店も存在します。しかし、カーホップはごく一部の店舗を除いて、地方で細々と営業を続けている状況です。

一方で、カーホップは1950年代から60年代にかけてのアメリカ文化を象徴する存在として認識されており、1950年代のアメリカを舞台にしたシットコム『ハッピーデイズ』には頻繁に登場します。また、映画『アメリカン・グラフィティ』では、カーホップをテーマにしたポスターが制作されました。これらの作品は、当時のアメリカの雰囲気を現代に伝えています。

カーホップは、単なる配膳係以上の存在であり、アメリカのドライブイン文化と深く結びついています。その歴史は、自動車文化の発展と人々のライフスタイルの変化を反映しており、現代においても懐かしさと魅力をもって語り継がれています。

参考文献

* Heimann, Jim (1996). Car hops and curb service: a history of American drive-in restaurants, 1920-1960. San Francisco: Chronicle Books. ISBN 0-8118-1115-8

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