カール・テルツァーギ

カール・フォン・テルツァーギ：土質力学の父

カール・フォン・テルツァーギ（Karl von Terzaghi, 1883年10月2日 - 1963年10月25日）は、オーストリア＝ハンガリー帝国（現在のチェコ）出身の土木技術者であり、地質学者、大学教授でした。後にアメリカ合衆国に帰化し、その生涯を土質力学の発展に捧げました。

生涯

1883年、テルツァーギはプラハで生まれました。工学を志し、地質学を専門的に学んだ後、水力発電所のダム建設プロジェクトにエンジニアとして参加し、その才能を発揮しました。第一次世界大戦中はオーストリア軍に所属し、戦後、その経験と知識を活かして土質力学の研究に本格的に取り組み始めました。

1938年、テルツァーギはアメリカ合衆国に移住し、市民権を取得。ハーバード大学で教鞭を執り、土質力学の分野で多くの人材を育成しました。1963年、アメリカで生涯を閉じましたが、彼の残した業績は、今日の土木工学に深く根付いています。

業績：土質力学の確立

テルツァーギの最大の功績は、当時未開拓であった土質力学の分野を確立したことです。彼は、土の物理的・力学的性質を科学的に解明し、建築物や構造物の基礎設計に応用するための理論と手法を開発しました。

特に有名なのは、「テルツァーギの公式」と呼ばれる基礎の支持力に関する公式です。この公式は、基礎の形状、土の性質、地下水位などの要素を考慮して、基礎がどれだけの荷重に耐えられるかを計算するために用いられます。現代の建築・土木構造物の設計において、基礎の安定性を評価する上で欠かせないツールとなっています。

テルツァーギは、圧密理論や有効応力という概念を導入し、土中の水が土の強度や変形に与える影響を明らかにしました。これらの理論は、地盤沈下や斜面崩壊などの地盤災害のメカニズムを理解し、対策を講じる上で重要な役割を果たしています。

これらの功績により、テルツァーギは「土質力学の父」と呼ばれるようになり、世界中の土木技術者から尊敬を集めています。

テルツァーギ賞

彼の功績を記念し、米国土木学会（ASCE）では、土質力学および地盤工学の分野で顕著な貢献をした研究者や技術者に対して、カール・テルツァーギ賞を授与しています。この賞は、土質力学分野における最高の栄誉の一つとされています。

主な著書

Erdbaumechanik auf bodenphysikalischer Grundlage. Wien, 1925
Theoretical Soil Mechanics, John Wiley and Sons, New York (1943)
* Soil Mechanics in Engineering Practice, 3rd Ed. Wiley-Interscience (1996)

テルツァーギの著書は、土質力学の基礎を学ぶ上で不可欠な文献として、今も多くの学生や研究者に読まれています。

まとめ

カール・フォン・テルツァーギは、土質力学の分野を確立し、その発展に大きく貢献した偉大な科学者であり技術者でした。彼の残した業績は、現代の土木工学に深く根付き、私たちの社会の安全と発展に貢献し続けています。

もう一度検索