カール・フリードリヒ・アーベル

カール・フリードリヒ・アーベル (Carl Friedrich Abel) の生涯と業績

ドイツ出身の作曲家カール・フリードリヒ・アーベルは、1723年12月22日にアンハルト＝ケーテン公国のケーテンで生まれました。アーベルの父、クリスティアン・フェルディナンド・アーベルは、著名な作曲家ヨハン・ゼバスティアン・バッハが楽長を務めていたケーテン宮廷楽団の首席ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者でした。この環境に育まれたアーベルは、幼少期から音楽に囲まれ、自然とその道を歩むことになりました。

アーベルは、ライプツィヒにあるThomasschuleで学ぶことになります。1748年、バッハの推薦を受け、ドレスデンのヨハン・アドルフ・ハッセの宮廷楽団に加わります。ここでの10年間は彼の音楽家としての基盤を形成する重要な時期となりました。1759年にはイギリスに渡り、シャーロット王妃のお抱えの室内楽奏者として新たなキャリアをスタートさせました。

ロンドンでは自作の演奏会を開催し、多様な楽器を演奏しました。この中には新しく開発されたバリトン（弦楽器）の演奏も含まれ、彼の幅広い音楽的才能を披露しました。特に1762年、彼はバッハの11番目の息子、ヨハン・クリスティアン・バッハとロンドンで出会い、二人の深い友情から「バッハ＝アーベル・コンサート」が始まります。このコンサートはイングランドにおける予約制演奏会の先駆けとなり、多くの著名な演奏家が参加しました。

このコンサートでは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品がイギリスで初めて演奏されたこともあり、アーベルの音楽的地位をさらに高めました。演奏会はテレサ・コーネリーズという引退したオペラ歌手が主宰し、カーライル・ハウスという会場で行われました。しかし、1764年から1774年までの成功を経て、アーベルとヨハン・クリスティアン・バッハは共同でハノーヴァー・スクエア・ルームズを設立します。しかし、経営は難航し、1782年にはバッハが亡くなったことも重なり、アーベルの事業は破綻します。

アーベルは引き続き演奏家として活動していましたが、次第に酒に溺れていきました。1787年6月20日、彼はロンドンで亡くなり、セント・パンクラス・オールド教会に埋葬されました。彼の遺体のそばには愛用のヴィオラ・ダ・ガンバが安置されたといわれています。

アーベルの音楽は、特に1764年にロンドンを訪れた少年モーツァルトによっても知られています。モーツァルトはアーベルの作品を筆写し、後に彼の『交響曲第3番 変ホ長調 K. 18』として知られる楽曲に繋がりました。これはアーベルのオリジナル作品から派生したものであり、19世紀にはモーツァルトの作として広く認識されることになります。

代表作一覧

アーベルの作曲活動は多岐にわたり、以下のような作品が代表的です。

• - 6つの序曲または交響曲集 作品1
• - 6つのヴァイオリン（またはフルート）と通奏低音のためのソナタ集 作品2
• - 鍵盤楽器、ヴァイオリン（またはフルート）、チェロのための6つのソナタ集 作品5（チェロは随意）
• - 6つの交響曲集 作品7
• - 6つの交響曲集 作品10
• - ハープシコード（ピアノフォルテ）と弦楽のための6つの協奏曲 作品11（弦楽の編成は第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンとチェロ（コントラバス））
• - 6つの交響曲集 作品17
• - 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための小品集 WKO 186-212

彼の音楽は、同時代の多くの作曲家にも影響を与え続け、今日でも演奏される機会があります。アーベルは、その多様な音楽的才能を通じて、後世の音楽史に重要な足跡を残した作曲家であったと言えるでしょう。

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