カール・マイヤー

カール・マイヤー：ヒトラーを政界に導いた影の立役者、そして反ナチの闘士

カール・マイヤー（Karl Mayr, 1883年1月5日 - 1945年2月9日）は、ドイツ帝国陸軍の軍人であり、政治活動家でした。最終階級は陸軍少佐。彼は、後にナチス・ドイツの独裁者となるアドルフ・ヒトラーを政界に引き込んだ人物として知られていますが、その生涯は複雑なものでした。

軍人としての経歴

バイエルン王国のミンデルハイムで、判事の息子として生まれたマイヤーは、1901年にバイエルン軍に入隊し、第一次世界大戦では第1猟兵大隊の一員として、ロートリンゲンやフランドルを転戦しました。その後、東部軍集団やアルプス軍団にも所属し、参謀としても活躍しました。

停戦後の1918年12月には、ミュンヘン駐留の第1バイエルン歩兵連隊で中隊長を務め、1919年5月には、第4集団司令部第4局（Ib部）およびドイツ義勇軍「フォン・オーフェン」の諜報・プロパガンダ部長に就任しました。

ヒトラーとの出会いと指導

マイヤーの人生における最大の転換期は、1919年6月にアドルフ・ヒトラーをスカウトしたことでした。マイヤーはヒトラーを潜入諜報員および宣伝演説者として訓練し、民族主義思想を植え付けました。ヒトラーは、マイヤーの指示のもと、ミュンヘンで反ボリシェヴィキの演説を行い、政治集会に潜入して情報を収集しました。

特に重要なのは、1919年9月12日にヒトラーがドイツ労働者党の集会に参加したことです。ここで、ヒトラーは反ユダヤ主義や反共産主義の思想に感銘を受け、入党を決意しました。また、マイヤーはヒトラーに反ユダヤ主義思想を文書で示す「ゲムリッヒ書簡」を書かせました。

1920年3月のカップ一揆では、ベルリンの情勢を探るためにヒトラー、ディートリヒ・エッカート、ローベルト・フォン・グライムを派遣。しかし、同年7月、マイヤーはカップ一揆の首謀者ヴォルフガング・カップに手紙を送ったことを咎められ、軍を退役しました。

マイヤーは、ヒトラーの政治的才能を見抜いていたわけではなく、彼以外にも多くの部下に同様の任務を課していました。しかし、結果的に、ヒトラーはマイヤーの指導を受けたことで政界への第一歩を踏み出し、後にナチス・ドイツの総統へと上り詰めることになります。

反ナチへの転身と悲劇的な最期

1921年頃まではヒトラーとナチ党に共感していたマイヤーですが、次第にその反対者、批判者へと転じます。1925年にはドイツ社会民主党（SPD）に入党し、同党の準軍事組織「国旗団」の指導者・機関紙編集者として活動しました。彼はナチ党やレームに関する情報収集にも努めました。

1933年にナチ党が権力を掌握すると、マイヤーはフランスに亡命しましたが、1940年にドイツ軍に逮捕され、ザクセンハウゼン強制収容所に収容されます。その後、ブーヘンヴァルト強制収容所に移送され、強制労働に従事させられました。1945年2月9日、イギリス空軍の空襲に巻き込まれ、その波乱に満ちた生涯を終えました。

マイヤーは、ヒトラーを政界に導いた人物として知られていますが、その後の反ナチ運動と悲劇的な最期は、彼の複雑な人生を物語っています。彼は、激動の時代の中で、自身の信念を貫き通した人物だったと言えるでしょう。

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