カール・ラーション

カール・ラーション：スウェーデンの国民的画家、その生涯と作品

カール・ラーション（1853年5月28日 - 1919年1月22日）は、スウェーデンが生んだ国民的画家です。油彩、水彩の両方で多数の作品を残し、特に家族を題材とした作品は、温かい家庭の風景と幸福感に満ち溢れ、世界中の人々を魅了し続けています。

生い立ちと初期の活動

ラーションは、ストックホルムの貧しい家庭に生まれました。幼少期は苦労の連続でしたが、小学校の教師が彼の才能を見抜き、王立美術学校への入学を勧めます。1866年、予備課程に入学したラーションは、才能を開花させ、数々の賞を受賞しました。

生活のために、1871年から風刺雑誌の挿絵を描き始め、その後は書籍や雑誌の仕事も請け負うようになります。アンデルセン童話や『シンゴアッラ物語』など、数々の名作に彼のイラストが添えられました。

パリでの転機とジャポニスムの影響

1877年、ラーションはパリへ旅行し、モンマルトルやバルビゾンで困窮生活を送りながらも制作を続けました。1882年、芸術家が集まるグレー＝シュル＝ロワンに移り住んだことが、彼の作風に大きな変化をもたらします。外光主義のレアリスムを取り入れ、水彩画に自然光を再現する技法を確立しました。

また、パリ滞在中には日本の美術に触れ、大きな影響を受けました。浮世絵の構図や線描様式は、彼の作品に新たな表現をもたらし、アール・ヌーヴォーの先駆けとしても評価されるようになります。ラーション自身も「日本は芸術家としての私の故郷である」と語り、自邸には日本の美術品を数多く飾っていました。

家族との生活と作品

1883年、ラーションは女流画家のカーリン・ベーリェーと結婚し、7人の子供を授かります。1888年からは、カーリンの実家であるスンドボーンの家「リッラ・ヒュットネース」で家族と共に暮らし、子供たちを題材とした作品を数多く制作しました。

これらの作品は、当時のスウェーデン中流階級の日常生活を描いたもので、子供たちの愛らしい姿や、温かい家庭の雰囲気が伝わってきます。ラーションの作品は、人々に幸福感を与え、瞬く間に人気を博しました。

画家としての成功と晩年

1885年、ストックホルムでの展覧会で成功を収め、ヴァーランド美術学校の教師となります。その後も、国立美術館のフレスコ壁画制作や、各地の劇場や学校での作品制作など、精力的に活動を続けました。

1899年に出版された画集『わたしの家』は、彼の代表作として知られています。家族との生活を描いた水彩画は、世界中で愛され、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

晩年は、自伝の執筆に没頭し、1919年にファールンの自宅で亡くなりました。

死後の評価と『冬至の生贄』

ラーションの死後、リッラ・ヒュットネースはカール・ラーション・ゴーデンとして公開され、観光名所となっています。

国立美術館に受け入れを拒否された大作『冬至の生贄』は、長らくの間、日の目を見ることはありませんでしたが、1992年の「カール・ラーション大回顧展」で展示され、高い評価を得ました。その後、国立美術館によって買い取られ、現在では美術館の重要なコレクションとなっています。

主な作品

『林檎の花』（1894年）
『ブリータと私』（1895年）
『白樺の木陰での朝食』（1896年）
『おねぼうさんの朝食』（1897年）
『夏休みの宿題』（1898年）
『日曜日の休息』（1900年）
『スサンヌともう2人』（1901年）
『18歳』（1902年）
『夏の終わり 湖畔のカーリン』（1908年）
『グスタヴ・ヴァーサのストックホルム入城』（1908年）
* 『冬至の生贄』（1915年）

まとめ

カール・ラーションは、家族愛と日常生活の温かさを描き続けた、スウェーデンを代表する国民的画家です。彼の作品は、時代を超えて人々の心を捉え、温かい気持ちにさせてくれます。ぜひ一度、彼の作品に触れて、その魅力に浸ってみてください。

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