カール・ロベルト・ネッセルローデ

カール・ロベルト・ネッセルローデ：帝政ロシアを支えた外交官

カール・ロベルト・ネッセルローデ（1780年 - 1862年）は、帝政ロシアの外務大臣、首相を歴任し、19世紀ヨーロッパの政治に大きな影響を与えた人物です。バルト・ドイツ貴族出身であり、その国際的な感覚と卓越した外交手腕で、ロシアの国益を守り、ヨーロッパの安定に貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

1780年、ネッセルローデはポルトガルのリスボンで、ロシア帝国の外交官である父のもとに生まれました。幼少期からヨーロッパ各地で教育を受け、様々な言語や文化に触れる機会を得ました。16歳でロシア海軍に入隊し、その後陸軍、そして外務省へと進みます。ベルリンやデン・ハーグでの勤務を経て、ナポレオン戦争の時代には、フランス軍の情勢を探る任務にも従事しました。

外務大臣としての活躍

1816年、ネッセルローデは外務大臣に任命され、以後約40年間、ロシアの外交政策を主導しました。ウィーン体制下では、ヨーロッパの勢力均衡を維持するために尽力し、神聖同盟を主導しました。アレクサンドル1世、ニコライ1世の時代にわたり、その外交手腕を発揮し、ロシアの国際的な地位を高めました。ヒュンキャール・イスケレスィ条約やロンドン海峡協定の締結に貢献し、対オスマン帝国政策では、従来のコンスタンティノープル征服から、オスマン帝国の弱体化とロシアへの従属へと方針を転換しました。

保守政治家としての信念

ネッセルローデは、保守主義の政治家として、革命や自由主義の拡大を警戒しました。1848年のヨーロッパ各地での革命勃発時には、オーストリアの要請に応じてロシア軍を派遣し、ハンガリーの独立運動を鎮圧しました。これは、ネッセルローデがウィーン体制を維持し、ヨーロッパの安定を重視していたことの表れと言えるでしょう。

クリミア戦争と晩年

しかし、ネッセルローデの外交政策は、常に成功したわけではありません。バルカン半島や地中海におけるロシアの影響力拡大は、イギリスやフランスとの対立を招き、1853年にはクリミア戦争が勃発しました。クリミア戦争は、ロシアにとって苦い結果となり、ネッセルローデの外交手腕に対する批判も高まりました。戦後、パリ講和条約を締結し、1856年に外務大臣を辞任しました。1862年、サンクトペテルブルクで亡くなりました。

極東政策

ネッセルローデは極東にも目を向け、1843年にエフィム・プチャーチンを派遣しました。アムール川の河口にニコラエフスク・ナ・アムーレを建設し、1855年には日露和親条約を締結しました。また、清国がアロー戦争に敗れた後、外満洲一帯をロシア帝国に割譲させるなど、極東におけるロシアの勢力拡大にも貢献しました。

評価

カール・ロベルト・ネッセルローデは、19世紀のロシア外交を代表する人物であり、その功績と影響は大きいと言えます。保守的な政治家でありましたが、現実主義的な外交手腕を発揮し、ロシアの国益を守り、ヨーロッパの安定に貢献しました。しかし、クリミア戦争における失策など、批判的な側面も存在します。彼の生涯は、19世紀ヨーロッパの政治史を理解する上で、重要な鍵となるでしょう。

関連事項

ウィーン会議
アーヘン会議 (1818年)

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