エフィム・プチャーチン

エフィーミー・ヴァシーリエヴィチ・プチャーチン：日露和親条約締結に貢献したロシアの軍人

エフィーミー・ヴァシーリエヴィチ・プチャーチン（1803年 - 1883年）は、ロシア帝国の海軍軍人、政治家であり、教育大臣も務めました。彼の功績として特筆すべきは、日本との間で日露和親条約を締結し、ロシア帝国の極東地域における影響力を確立したことです。

生涯

プチャーチンはサンクトペテルブルクで生まれ、ノヴゴロド貴族の家系にルーツを持ちます。海軍士官学校を卒業後、ミハイル・ラザレフの指揮下で世界周航を経験。ギリシャ独立戦争ではナヴァリノの海戦に参加し、その武功により勲章を授与されました。その後も地中海やバルト海、コーカサスでの軍務を経て、大佐に昇進しています。

1842年には、ロシア皇帝ニコライ1世の命を受け、カスピ海を通じてペルシアとの通商強化を図るためペルシアに派遣。トルクメン人海賊の討伐や、ペルシアのシャーとの交渉により、交易権や漁業権を獲得しました。これらの功績により少将に昇進しています。

日露和親条約締結

プチャーチンの名が歴史に刻まれているのは、1853年に日本に派遣され、日露和親条約を締結したことです。当時、ロシアは極東地域における影響力拡大を目指しており、プチャーチンはその重要な役割を担いました。

アメリカ合衆国のペリー提督が日本に開国を迫ったことを受け、ロシアも日本との条約締結を目指し、プチャーチンを全権使節に任命しました。彼は長崎に派遣され、幕府との交渉を開始。クリミア戦争の影響で一時中断を余儀なくされましたが、1855年、ついに日露和親条約の締結に成功しました。この条約により、日本はロシアに対し、下田、箱館、長崎の開港を認め、ロシアは日本に領事館を設置する権利を得ました。

プチャーチンの交渉は決して容易なものではありませんでした。安政東海地震によるディアナ号の沈没という困難にも見舞われましたが、彼は日本の人々の協力のもと、新たな船を建造し、交渉を継続しました。彼の誠実な姿勢は、幕府の役人たちにも好印象を与え、条約締結を後押ししました。

その後の活躍

日露和親条約締結後も、プチャーチンはロシア帝国の外交官として活躍を続けました。清との間では天津条約を締結し、ロシアの権益を拡大。また、日露修好通商条約の締結にも尽力しました。

1861年には教育大臣に任命され、教育改革に取り組みましたが、学生運動の弾圧などにより、短期間で辞任。その後は、ロシア科学アカデミー名誉会員やロシア帝国国家評議会議員などの要職を務めました。

1881年には、日露友好に貢献した功績により、日本政府から勲一等旭日章を贈られています。1883年にパリで亡くなりました。

人物評

プチャーチンは、交渉相手の国情を尊重し、紳士的な態度で交渉に臨む外交官として知られていました。幕府の役人である川路聖謨は、プチャーチンを「真の豪傑」と評し、その人格と手腕を高く評価しています。プチャーチン自身も川路を「鋭敏な思考を持ち、紳士的態度は教養あるヨーロッパ人と変わらない一流の人物」と評しています。

プチャーチンは、日露関係の基礎を築いた重要な人物として、記憶されるべきでしょう。

関連情報

イワン・ゴンチャロフ - 随行記に『日本渡航記』がある
幕末のスパシーボ
* アレクサンドル・モジャイスキー - 訪日艦隊に随行。

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