ガザン・ハン

ガザン・ハン：激動の時代を駆け抜けたイルハン朝の君主

ガザン・ハン（1271年11月4日 - 1304年5月17日）は、イルハン朝の第7代君主であり、第4代君主アルグンの長子です。弟に第8代君主オルジェイトゥがいます。彼の治世は、内乱と改革が交錯する激動の時代でした。

即位までの道のり

ガザンは、父アルグンが即位する以前から、ホラーサーン方面の軍を統率していました。父の死後、叔父のガイハトゥが君主となりますが、その失政により、ガイハトゥは従兄弟のバイドゥに殺害されます。ガザンは、バイドゥに対して反乱を起こし、これを討ち破ってイルハン朝の君主の座に就きます。

若き日のガザン

アルグンが即位した際、イルハン朝の各地はフレグ家の諸王子に分封されます。ガザンにはホラーサーン地方が与えられ、その副官としてキンシュウやノウルーズが付きました。しかし、バイドゥやノウルーズらは、ガザンと対立し、たびたび叛乱を起こしました。ガザンは、少年時代からこのような内紛の中で育ちました。

イスラームへの改宗

ガザンは元々仏教徒でしたが、ノウルーズの進言によりイスラームに改宗しました。ノウルーズは、ガザンがイスラームに改宗することで、イスラム教徒からの支持を得られると説いたのです。1294年6月16日、ガザンは正式にイスラームに改宗し、「マフムード・ガザン」と名乗りました。この改宗は、イルハン朝の歴史を大きく変える出来事でした。ガザンの改宗後、彼の軍も次々とイスラームに改宗しました。

君主としてのガザン

1295年10月4日、ガザンはバイドゥを討ち破り、イルハン朝の君主として即位しました。彼は「イスラームの帝王」を自称し、イスラーム化を推進しました。即位後、仏教寺院やゾロアスター教寺院が破壊され、キリスト教会堂やユダヤ教会堂も破壊されました。この政策は、イルハン朝がイスラーム国家へと変貌していく象徴的な出来事でした。

政治改革と文化振興

ガザンは、宰相にラシードゥッディーンを任命し、財政改革や支配体制の強化に努めました。また、ラシードゥッディーンに命じて、チンギス・カン家とフレグの遠征以来のテュルク・モンゴル系諸部族の歴史をまとめた『集史』を編纂させました。『集史』は、後の歴史叙述に大きな影響を与えた重要な歴史書です。ガザンの治世は、政治的、文化的にイルハン朝が大きく発展した時代でした。

死とその後

1304年5月17日、ガザンは34歳で病没しました。彼の遺体はタブリーズに運ばれ、生前に建設した複合施設に埋葬されました。ガザンの死後、弟のオルジェイトゥがハン位を継ぎました。ガザンとオルジェイトゥの時代は、イルハン朝の全盛期でしたが、二人の在位期間が短かったことが、その後の衰退を招く一因となりました。

関連項目

集史
ラシードゥッディーン
* クビライ

ガザン・ハンは、内乱と宗教改革という激動の時代を生き抜き、イルハン朝の歴史に大きな足跡を残しました。彼の施策は後の歴史に大きな影響を与え、その生涯は今もなお語り継がれています。

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