フレグ

フレグ：イルハン朝の創始者

フレグ（Hülegü, 1218年 - 1265年）は、モンゴル帝国の拡大に大きく貢献し、イルハン朝（フレグ・ウルス）を築いた歴史上の人物です。チンギス・カンの息子トルイと、ケレイト出身のソルコクタニ・ベキを両親に持ち、モンケ、クビライ、アリクブケらと兄弟関係にありました。ペルシア語文献では「Hūlākū Khān」、漢語文献では「旭烈兀」、ウイグル文字モンゴル語表記では「'wl'kw」と表記されています。

幼少期から西征へ

フレグの幼少期に関する記録は多くありませんが、『元史』によると、祖父であるチンギス・カンから所領を与えられていたことがわかります。1253年、兄のモンケ・カアンの命を受け、西征軍の総司令官に任命されました。フレグはイラン方面を掌握し、ニザール派、アッバース朝、シリア、アナトリア、エジプトなどを征服する大規模な軍事行動を開始しました。

西アジア制覇とイルハン朝の建国

フレグ率いる西征軍は、1256年にニザール派の本拠地であるアラムート城を陥落させました。そして1258年、バグダードを征服し、アッバース朝最後のカリフであるムスタアスィムを殺害、アッバース朝を滅ぼしました。その後も、アレッポ、ダマスクスなどを次々と征服し、勢力を拡大していきます。

1259年、モンケ・カアンが死去すると、クビライとアリクブケが後継を争う内紛が起こりました。フレグはモンゴル本国への帰還をせず、中東地域に留まり、1260年秋、イルハン朝を建国しました。この頃、フレグはジョチ・ウルスのベルケと対立（ベルケ・フレグ戦争）、深刻な紛争に巻き込まれることになります。

イルハン朝と文化

フレグは首都をタブリーズに定め、各地に夏営地と冬営地を設けました。特に、マラーゲに建設した天文台は有名で、ナースィルッディーン・トゥースィーら著名な学者を招き、『イルハン天文表』の作成などを進めました。これは、イルハン朝における科学技術の発展を示す重要な出来事です。フレグは、1265年2月8日、マラーゲ周辺で死去しました。

家族と子孫

フレグには多くの妻妾と子供たちがいました。『集史』によると、14人の息子と7人の娘がいたとされています。その中でも、長男のアバカはフレグの後を継ぎ、イルハン朝の第2代君主となりました。アバカの息子アルグン、ゲイハトゥもイルハン朝の君主となり、フレグの子孫たちはイルハン朝の統治を続けたのです。フレグの他の息子たち、例えば、タラガイはバイドゥの父であり、ヨシムトの曾孫にはイルハン朝最末期の君主スライマーンがいます。それぞれの子供たちは、様々な場所で政治的・文化的影響力を持ちました。

まとめ

フレグは、西アジアの歴史に大きな影響を与えたモンゴル帝国の指導者でした。彼の西征は、地域のパワーバランスを根本的に変え、イルハン朝の礎を築きました。また、文化面においても、マラーゲ天文台の建設など、大きな貢献を残しました。イルハン朝の興亡は、フレグの行動と意思決定が大きく反映されていると言えるでしょう。彼の生涯と功績は、モンゴル帝国史、そして西アジア史において重要な位置を占めています。

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