ガストン・パリス

ガストン＝ブリュノ＝ポーラン・パリス：フランス中世文学研究の巨匠

ガストン＝ブリュノ＝ポーラン・パリス (1839年8月9日-1903年3月5日) は、フランスを代表する文献学者、言語学者であり、フランス中世文学研究において卓越した功績を残しました。その生涯と業績は、フランス語学、ロマンス語研究の歴史に大きな足跡を残しています。

初期の経歴と教育

マルヌ県アヴネ・ヴァル・ドールに、学者であった父ポーラン・パリスのもとに生まれました。コレージュ卒業後、ドイツのボン大学とゲッティンゲン大学へ留学。ボン大学では、著名なロマンス語学者フリードリヒ・ディーツに師事し、深い影響を受けました。1859年に帰国後、1862年にはフランス国立古文書学校を卒業しています。シャルルマーニュ叙事詩に関する研究で1865年に文学博士号を取得、その後も精力的に研究活動を進めました。

研究活動と学界での貢献

1868年、高等研究実習院教授に就任。1872年には父の後任としてコレージュ・ド・フランスのフランス語学・文学教授に就任するなど、フランスの学界において重要な地位を占めました。

パリスはロマンス語文献学の第一人者として知られています。1865年にはポール・メイエらと歴史・文献学研究の雑誌『Revue critique』を、1872年にはメイエとともにロマンス語文学研究の専門誌『Romania』を創刊しました。さらに、ディーツの『ロマンス語文法』のフランス語訳にも携わっています。

フランス語方言論における革新的な主張

パリスはフランス語の方言研究においても重要な役割を果たしました。1888年の講演「フランスの方言」(Les parlers de France) では、当時一般的であったフランスにオイル語とオック語という二つの言語が存在するという考えを否定。フランス語を、少しずつ色合いの変わるタペストリーのようなもの、方言境界が存在しない連続体と捉える斬新な主張を行いました。この見解には政治的な含みもあったものの、彼の指摘は後の「方言連続体」という概念の基礎となりました。また、ジュール・ジリエロンによる画期的な『フランス言語地図』作成にも貢献しています。

栄誉と晩年

パリスの業績は高く評価され、1876年には碑文アカデミー会員に、1896年にはアカデミー・フランセーズ会員に選出されました。さらに、ノーベル文学賞の最初の3回の授賞においても候補に挙がったほどです。1903年、カンヌで生涯を閉じました。

まとめ

ガストン＝ブリュノ＝ポーラン・パリスは、フランス中世文学研究に多大な貢献をしただけでなく、フランス語学、ロマンス語学の研究方法にも大きな影響を与えた重要な人物です。彼の研究は、現代の言語学や文献学の基礎を築き、その功績は現在も高く評価されています。彼の残した膨大な著作と、学界における指導的役割は、後世の研究者たちに大きな影響を与え続けています。彼の業績は、単なる学問的成果にとどまらず、フランス語、ひいてはヨーロッパ言語文化の理解を深める上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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