ガゼル

ガゼルの概要

ガゼルは、ウシ科ブラックバック亜科に属する哺乳類で、特にガゼル属、トムソンガゼル属、ダマガゼル属の3つの属を指す総称として用いられます。これらの動物は、かつては一つのガゼル属にまとめられていましたが、遺伝的な研究が進んだ結果、現在では別々の属として分類されています。

分布

ガゼルの仲間は、アフリカ大陸やユーラシア大陸といった広い範囲に分布しています。様々な環境に適応しており、サバンナ、ステップ、半砂漠、砂漠など多様な場所に生息しています。

形態の特徴

ガゼルの仲間の中で最も大きい種はダマガゼルで、体長は140〜165cm、尾長は25〜35cm、肩高は90〜120cm、体重は40〜75kgに達します。ガゼルの特徴として、眼から鼻孔にかけて白色または汚白色の縁取りがある暗色の斑紋（顔側線）が見られます。

頭骨の特徴として、脳頭蓋（眼窩より後方の頭骨）が顔面頭蓋（眼窩後端より前の部分）の1/2と長くなっています。角はコウジョウセンガゼルを除いて、雌雄ともに前から見ると竪琴状、横から見るとS字状をしており、表面には節が発達しています。また、眼の下（眼下腺）と後肢の付け根の内側（鼠蹊腺）には臭腺があります。特にオスの角は太く、長いのが特徴です。

生態

ガゼルは、サバンナやステップ、半砂漠、砂漠などの開けた場所に生息し、草、木の葉などの植物を食べる草食動物です。

分類

ガゼルは、通常、ガゼル属（Gazella）、トムソンガゼル属（Eudorcas）、ダマガゼル属（Nanger）の3つの属を指しますが、分類については議論があります。これらの3属は、ブラックバックを姉妹群とする単系統、あるいはブラックバックを内包する側系統であると考えられています。

以前は、チベットガゼル属（Procapra）や、スプリングボック属（Antidorcas）、ディバタグ属（Ammodorcas）、ジェレヌク属（Litocranius）もガゼルに含めることがありましたが、系統の研究が進み、スプリングボック属、ディバタグ属、ジェレヌク属はガゼルに近いものの、チベットガゼル属は系統的に離れていることが分かりました。

現生種

ガゼル属 (Gazella)
エドミガゼル (Gazella cuvieri)
リムガゼル (Gazella leptoceros)
サンドガゼル (Gazella marica)
チンカラ (Gazella bennettii)
コウジョウセンガゼル (Gazella subgutturosa)
マウンテンガゼル (Gazella gazella)
スペックガゼル (Gazella spekei)
ドルカスガゼル (Gazella dorcas)
ダマガゼル属 (Nanger)
グラントガゼル (Nanger granti)
ゼメリングガゼル (Nanger soemmerringii)
ダマガゼル (Nanger dama)
トムソンガゼル属 (Eudorcas)
コリンガゼル (Eudorcas rufifrons)
トムソンガゼル (Eudorcas thomsonii)

現世絶滅種

イエメンガゼル (Gazella bilkis)
サウジガゼル (Gazella saudiya)
アカガゼル (Eudorcaslla rufina)

化石絶滅種

Gazella harmonae
Gazella psolea
Gazella praegaudryi
その他多数

ガゼルに含めることがあった近縁種

ジェレヌク属 (Litocranius)
ジェレヌク (Litocranius walleri)
スプリングボック属 (Antidorcas)
スプリングボック (Antidorcas marsupialis)
ディバタグ属 (Ammodorcas)
ディバタグ (Ammodorcas clarkei)
チベットガゼル属（Procapra）
モウコガゼル (Procapra gutturosa)
プシバルスキーガゼル (Procapra przewalskii)
* チベットガゼル (Procapra picticaudata)

人間との関係

ガゼルは、開発による生息地の破壊や、食用、皮目的の乱獲によって生息数が減少している種もいます。また、英語圏の女性名「タバサ」はガゼルに由来しています。

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