ガトー・バルビエリ

ガトー・バルビエリ：情熱と革新のジャズ・サックス奏者

ガトー・バルビエリ（1932年11月28日 - 2016年4月2日）は、アルゼンチンが生んだ世界的なジャズ・テナー・サックス奏者、そして作曲家です。「ガトー」はスペイン語で「猫」を意味する愛称で、彼の音楽と人柄をよく表しています。1960年代のフリー・ジャズ運動、1970年代のラテン・ジャズ作品を通じて、独自の音楽世界を確立し、世界中の音楽ファンを魅了しました。

生涯

音楽との出会い

音楽一家に生まれたバルビエリですが、幼少期は音楽とは距離を置いていました。しかし、12歳の時にチャーリー・パーカーの「Now's the Time」を聴き、衝撃を受けます。これをきっかけにクラリネットを始め、音楽の道へ足を踏み入れました。

1947年、ブエノスアイレスへ移り、アルト・サックスに転向。1953年には、同じアルゼンチン出身のピアニスト、ラロ・シフリンのオーケストラに加入し、音楽家としてのキャリアを本格的にスタートさせます。シフリンの元でテナー・サックスも演奏するようになり、1950年代後半には自身のグループを率いて活動を始めました。

ローマへ

1962年、イタリア人女性ミシェルとの結婚を機に、活動拠点をイタリアのローマへ移します。ミシェルはバルビエリに「ガトー」という愛称を与えた人物であり、彼の音楽活動を公私にわたり支え続けました。

フリー・ジャズとの出会い

ローマ移住後、パリでトランペット奏者のドン・チェリーと出会います。1960年代は、アルバート・アイラーやファラオ・サンダースといったフリー・ジャズ・サックス奏者が活躍した時代。バルビエリもジョン・コルトレーンの後期作品から強い影響を受けつつ、暖かくザラついた独特の音色を確立していきます。

イタリアでは、現地のミュージシャンの作品に客演し、1965年にはニューヨークへ移住。ドン・チェリーのバンドに正式加入し、数年間活動しました。

リーダーとしての活動

1967年、初のリーダー・アルバム『イン・サーチ・オブ・ザ・ミステリー』を発表。翌年には、マイク・マントラーのジャズ・コンポーザーズ・オーケストラに参加。この経験が、後のチャーリー・ヘイデンの「Liberation Music Orchestra」やカーラ・ブレイの「Escalator Over The Hill」といった大規模プロジェクトへの参加へと繋がっていきます。

ラテン・ジャズへの転換

1970年代に入ると、バルビエリはフリー・ジャズ一辺倒だったスタイルから、自身のルーツである南米音楽の要素を取り入れた音楽へと変化を遂げます。ボブ・シールがプロデュースしたフライング・ダッチマン時代の作品群は、その成果を示すものでした。

1972年には、ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』の音楽監督を担当し、翌年にはグラミー賞を受賞。国際的なスターとしての地位を確立しました。また、憧れのジョン・コルトレーンがかつて在籍したインパルス・レコードとの契約も実現。エド・ミシェルのプロデュースによるインパルス時代の「Chapter四部作」は、バルビエリの全盛期を捉えた金字塔として評価されています。

ポップ路線への挑戦

1976年、A&Mレコードと契約し、音楽性をロック的な要素を取り入れたポップなものへと変化させます。アルバム『カリエンテ！』には、カルロス・サンタナの「Europa」のカバーが収録されており、彼の代表的な演奏曲となりました。A&M時代は、ジャズ・ポップ路線を追求しながら、精力的にレコーディングと公演活動を続けました。

その後

1980年代に入ると、ウィントン・マルサリスに代表される新伝承派の台頭により、バルビエリの活躍の場は徐々に減少。1981年にファニア・レコードへ移籍しますが、リリースされた作品は1枚のみでした。1983年にはボブ・シールのドクター・ジャズ・レコードへ移籍するも、アルバム『アパショナード』を最後に、目立った活動は見られなくなります。

1990年代になると、活動を再開。アミール・ナデリ監督の『Manhattan by Numbers』(1991年)やダリューシュ・ショコフ監督の『Seven Servants』(1996年)で、映画製作総指揮を務めていた友人のバーマン・マグサウドロウの依頼で、それぞれの映画の音楽監督を担当しました。

しかし、1995年に長年連れ添った妻ミシェルが死去。数か月後には、自身も心臓発作で倒れてしまいます。1年以上の闘病生活を経て、1997年に14年ぶりの新作『Qué Pasa』をリリース。このアルバムでは、スムーズ・ジャズの要素を取り入れています。その後、2010年までに3枚のアルバムをリリースしました。

死去

2016年4月2日、ニューヨークで肺炎のため死去。83歳でした。

人柄

アルゼンチンにいた頃、雑誌に掲載された憧れのジョン・コルトレーンの写真に、ボロボロのサックスケースが写っているのを目にしたバルビエリは、匿名で新品の革製ケースを贈りました。後にコルトレーンと対面した際、そのケースについて尋ねたというエピソードが残っています。

また、テレビ番組『マペット・ショー』に登場する人形劇バンドDr. Teeth and The Electric Mayhemのメンバー、ズートのモデルはガトー・バルビエリだと言われています。

ディスコグラフィー

（省略）

関連項目

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ガトー・バルビエリは、その情熱的な音楽と革新的な精神で、ジャズ界に大きな足跡を残しました。彼の音楽は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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