ファラオ・サンダース

ファラオ・サンダース：精神性を追求したサックス奏者

ファラオ・サンダース（Pharoah Sanders, 1940年10月13日 - 2022年9月24日）は、アメリカ合衆国アーカンソー州リトルロック出身のジャズ・サクソフォーン奏者です。晩年のジョン・コルトレーンと活動を共にしたことで知られ、彼の音楽的遺産を継承する存在として、ジャズ界において重要な人物とされています。

音楽的遍歴

サンダースは、クラリネットからテナー・サックスに転向し、初期にはブルースを演奏していました。ボビー・ブランドのバックバンドを務めた経験も持ちます。1959年にカリフォルニア州オークランドに移り、デューイ・レッドマンやフィリー・ジョー・ジョーンズらと共演し、ジャズの研鑽を積みました。1962年には活動拠点をニューヨークに移し、サン・ラとの共演を経て、1964年にESP-Diskレーベルから初のリーダーアルバム『ファラオ』を発表しました。

1965年、サンダースはジョン・コルトレーンのグループに加入。1966年のコルトレーンの唯一の日本公演にも参加しました。コルトレーンの死後、サンダースは自身のバンドリーダーとしての活動に注力し、インパルス!レコードから発表された作品群で、ゴスペル、ファンク、アフロビートなど、幅広い黒人音楽の要素をフリージャズに取り込みました。特に、32分に及ぶ大作「The Creator Has A Master Plan」を収録した『カーマ』（1969年）と『ブラック・ユニティ』（1971年）は、彼の代表作として知られています。また、『ラヴ・イン・アス・オール』（1973年）では自らボーカルを披露するなど、表現の幅を広げました。この時期には、ロニー・リストン・スミス、セシル・マクビー、ロン・カーター、スタンリー・クラークなどが彼のサイドマンを務めました。

1977年にアリスタ・レコードへ移籍したサンダースは、コンテンポラリー路線にも取り組みました。1987年にはオランダのタイムレス・レコードに移籍。ヴァーヴ・レコードからは、『メッセージ・フロム・ホーム』（1996年）と『Save Our Children』（1998年）を発表。これらの作品には、バーニー・ウォーレルやジャー・ウォブルが参加し、ビル・ラズウェルがプロデュースを担当しました。さらに、日本のヴィーナス・レコードが監修した『ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン』（2003年）では、同名曲の再演や、ホイットニー・ヒューストンのカバー「Greatest Love Of All」を収録。2004年には日本のバンドSLEEP WALKERと共演し、その音源は同バンドのアルバム『The Voyage』（2006年）に収録されました。

サンダースは、自身のリーダー作でコルトレーンが作曲した「ネイマ」や「Welcome」、コルトレーンがレパートリーとしていた「夜は千の目を持つ」などを頻繁に取り上げ、師への敬意を表しました。

音楽性と評価

アルバート・アイラーは、サンダースを「トレーンが父、ファラオが子、私が聖霊」と三位一体になぞらえて表現しました。オーネット・コールマンは彼を「おそらく世界で最高のテナー・サックス奏者」と評しています。また、日本のクラブ・シーンでも人気が高く、アシッド・ジャズDJの沖野修也は「クラブ・ジャズ界における最重要レジェンド」と評するなど、幅広い層から支持されています。

ディスコグラフィー（一部）

サンダースは数多くの作品をリリースしており、その一部を以下に示します。

1960年代
『ファラオ』 (1964年録音)
『神話（ターウィッド）』 (1966年録音)
『イジフォ・ザム』 (1969年録音)
『カーマ』 (1969年録音)
『ジュエルズ・オブ・ソート』 (1969年録音)
1970年代
『SUMMUM BUKMUM UMYUM』 (1970年録音)
『テンビ』 (1970-71年録音)
『ブラック・ユニティ』 (1971年録音)
『ライヴ・アット・ジ・イースト』 (1971年録音)
『ヴィレッジ・オブ・ザ・ファラオズ』 (1971-73年録音)
『ラヴ・イン・アス・オール』 (1972-73年録音)
『ファラオ』 (1976年録音)
1980年代
『リジョイス』 (1981年録音)
『シュクルー』 (1981年録音)
『アフリカ』 (1987年録音)
『ムーン・チャイルド』 (1989年録音)
1990年代
『ウエルカム・トゥ・ラブ』 (1990年録音)
『愛のクレッセント』 (1992年録音)
『ネイマ』 (1995年録音)
『メッセージ・フロム・ホーム』 (1996年録音)

サンダースは、ジョン・コルトレーンの精神を受け継ぎ、フリージャズの枠を超えた音楽を追求しました。その精神性と革新的な音楽性は、今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

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