ガブリエル・ゲヴレキアン

ガブリエル・ゲヴレキアン：近代建築と庭園デザインのパイオニア

ガブリエル・ゲヴレキアン（1892年-1970年）は、20世紀を代表する建築家、庭園デザイナー、都市計画家、そして建築ジャーナリストとして知られています。アルメニア系イラン人の彼は、ウィーンで建築を学び、パリ、テヘラン、ロンドン、そしてアメリカと、国際的に活躍しました。彼の生涯と作品は、近代建築とランドスケープデザインの歴史に大きな足跡を残しています。

教育と初期のキャリア

ゲヴレキアンは、イスタンブール（当時オスマン帝国領）でアルメニア人の両親のもとに生まれました。その後、家族と共にテヘランに移住し、そこで育ちました。1910年には姉と共にウィーンへ渡り、建築家であるおじの影響を受けながら、ウィーン応用美術大学でオスカー・ストルナードとヨーゼフ・ホフマンといった巨匠に師事。1919年に卒業後も、両氏のもとで実務経験を積みました。

パリ時代とCIAMへの参加

1922年にパリに移り住んだゲヴレキアンは、アンリ・ソヴァージュやロベール・マレ＝ステヴァンスらと協働しながら、建築設計や庭園デザインの仕事を手がけました。ル・コルビュジエ、アンドレ・リュルサ、ジークフリート・ギーディオンといった近代建築の巨匠たちとも交流を深め、1927年には近代建築国際会議（CIAM）の創立メンバーとして参画し、1928年から1932年にかけて事務総長を務めました。また、フランスの建築雑誌『L'architecture d'aujourd'hui』の創立にも携わっています。

イランでの都市計画と国際的な活動

1933年、ゲヴレキアンはイラン政府に招聘され、テヘランの都市計画に携わりました。短期間のうちに数多くの政府機関や公共建物を設計し、イランへの国際スタイルのモダニズム建築の導入に貢献しました。その後、ロンドンで活動した後、第二次世界大戦中はパリに戻り、ザールブリュッケンの戦災復興などに従事しました。

アメリカでの教育活動

1948年、アメリカに移住したゲヴレキアンは、アラバマ工科大学、そしてイリノイ大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。1955年にはアメリカ国籍を取得し、1969年に引退しました。

代表作：「水と光の庭園」

ゲヴレキアンの代表作として知られるのが、1925年のパリ万国博覧会に出展された「水と光の庭園（Jardin d'Eau et de Lumiere）」です。この庭園は、幾何学的な形状と光の反射を効果的に用いた、革新的なデザインで注目を集めました。中心には回転する球体と照明を備えたプールがあり、植物とガラスの壁で囲まれた構成になっています。当初は「ペルシャ風庭園」とも呼ばれましたが、最終的には「立体派の庭園」として認識されるようになりました。

作品の解釈

ゲヴレキアンの作品は、立体派絵画の影響を受けているとされる一方、その解釈は多様です。単純に立体派絵画の模倣ではない、独自の解釈と表現方法が用いられています。彼の作品における幾何学的な構成や光の演出は、単なる装飾にとどまらず、空間と光との関係性を探求した、独自の表現手法と言えるでしょう。

まとめ

ガブリエル・ゲヴレキアンは、近代建築と庭園デザインの歴史に大きな貢献をした建築家です。ウィーンでの教育、パリでの国際的な活動、イランでの都市計画、アメリカでの教育活動と、彼の活動は多岐に渡り、それぞれの地域に大きな影響を与えました。「水と光の庭園」をはじめとする彼の作品は、今日でも高い評価を受けており、近代建築とランドスケープデザインの歴史における重要な遺産となっています。彼の活動は、国際的な視点と多様な文化背景を持つ建築家としての彼の多様な才能を反映していると言えるでしょう。彼の設計は、建築とランドスケープデザインの境界を越え、空間と光、そして自然との調和を追求した先駆的なものでした。その功績は、これからも高く評価され続けるでしょう。

もう一度検索