ガマズミ

ガマズミ（莢蒾）

ガマズミ（学名: Viburnum dilatatum）は、ガマズミ科ガマズミ属に分類される落葉低木です。日本をはじめとする東アジアに広く分布し、里山で見かけることの多い植物です。

名称の由来

和名である「ガマズミ」の語源には諸説あります。

赤い実を意味する「かがずみ」が転訛したという説
果実を口に含むと、噛まずに種を吐き出す様子から「かまず実」と呼ばれるようになったという説
熟した果実を染料として利用したことから「染め」が転じたという説

地方によっては、アラゲガマズミ、ヨスズ、ヨソゾメ、ヨツズミ、ヨウゾメなど、様々な別名で呼ばれています。

分布と生育環境

ガマズミは、日本、朝鮮半島、中国など、東アジアに分布しています。日本では、北海道南西部から九州にかけて広く分布し、平地から山地にかけての明るい林や草原に自生しています。

形態と生態

ガマズミは、樹高2〜4mほどの落葉低木です。樹皮は灰褐色で、若い枝には星状毛や腺点が見られます。葉は対生し、円形や卵形で、長さは6〜15cm程度。葉の縁には細かい鋸歯があり、表面にはわずかに凹凸があります。秋には美しく紅葉し、橙色から赤色へと変化します。

花期は5〜6月で、枝先に散房花序をつけ、白い小さな花を多数咲かせます。果実は直径6mm程度の球形で、晩夏から秋にかけて赤く熟します。完熟した果実は、表面に白い粉をふき、甘みが増します。冬になっても果実が残っていることがあり、ヒヨドリやメジロなどの小鳥が種子を運び、分布を広げます。

冬芽は卵形で、粗い毛が多く生えています。

近縁種

ガマズミに似た植物として、コバノガマズミやミヤマガマズミがあります。これらの植物は葉が細長く、先端が尖っている点でガマズミと区別できます。

人間との関わり

ガマズミは、古くから人々の生活に密接に関わってきました。

食用: 秋に熟した果実は、生食のほか、ジャムや果実酒などに加工されます。長野県戸隠村では、ダイコンやカブの浅漬けと一緒に漬け込み、「赤漬け」として親しまれています。

薬用: 果実は「莢蒾子（きょうめいし）」と呼ばれ、疲労回復や動脈硬化予防などの効果がある薬用酒として利用されます。

その他: 材は丈夫なため、農具の柄に利用されます。また、枝は柔らかく折れにくいため、物を束ねる際に使われてきました。庭木としても人気があります。

ガマズミは、私たちの暮らしに潤いを与えてくれる、身近な植物です。秋の紅葉や赤い果実を楽しむだけでなく、その恵みを様々な形で活用してみてはいかがでしょうか。

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