ガリカニスム

ガリカニスムとは

ガリカニスム（仏: Gallicanisme）は、フランスにおいて教皇の権限に対して国王の権力を優先させるという考え方を指します。この概念は、フランス国内の教会が教皇の影響から独立し、君主の支配下に置かれることを目指すものです。ガリカニスムは、フランス教会が自己の自治を主張し、教皇庁との関係を見直す動きを象徴しています。日本語では「ガリア主義」や「国家教会体制」としても知られています。

歴史的背景

ガリカニスムの起源は諸説ありますが、特に1303年のアナーニ事件や、14世紀の教皇権の制約に関する会議が重要な役割を果たしました。アナーニ事件では、国王と反教皇的な聖職者が結びつき、教皇の権力が揺らぎ始めます。また、教皇職の力が弱まっていく中、フランス国王は教会への影響力を強めていきました。例えば、1383年の権限問題では、教皇の権威が純粋な信仰上のものに限定され、実際の権力が王に移行する動きが見られました。

フランス教会の状況

15世紀には、フランス国内でアルマニャック派とブルゴーニュ派が教皇への支持を巡って対立しました。しかし、アルマニャック派を支持したシャルル7世のもとで、ガリカニスムは確固たる地位を築くことになります。なお、シャルル7世は教皇エウゲニウス4世の廃位を認めるには至らず、教皇権は完全には消滅しませんでした。ルイ11世も教皇との協調を模索する姿勢を見せていました。

一方で、フランスの異なる地域においては、国民教会への流れが確実に進行していきました。特に法学者やパリ高等法院などの知識層がガリカニスムを支持し、1516年にはフランソワ1世がボローニャの政教協約を結び、国王に聖職者の指名権を与えることが実現しました。この時期、1790年には聖職者公民憲章が制定され、聖職者が人民によって選ばれることとなり、教皇に対する忠誠がフランス憲法に置き換えられました。このように、実質的にローマ教皇権はフランスで撤廃され、ガリカニスムの特徴が強く現れることになりました。

ユルトラモンタニスムとの対立

19世紀になると、フランス教会内部でユルトラモンタニスムとガリカニスムが激しく対立することになります。特に1869年のヴァチカン公会議では、教皇の権限を巡って二つの主張が衝突し、最終的にユルトラモンタニスムの立場が優位に立ち、教皇の権威が確立されます。この時期以降、政治的な問題が教会内で優先され、神学的な議論は後回しにされる傾向があります。

しかし、1905年に制定された政教分離法によって、ガリカニスムは衰退していく運命をたどります。その結果、教会と国家の関係は大きく変化し、フランスにおけるガリカニスムの影響は次第に薄れていくこととなりました。

総括

ガリカニスムは、フランスの教会と国家の関係を再構築する重要な動きであり、教皇権への対抗の象徴として位置づけられています。近代の政治的な変動の中で、ガリカニスムはフランス社会の中での教会の役割を再評価し、国家教会という新たな形態を模索する過程を示しています。

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