ガリー・ベルティーニ

ガリー・ベルティーニ（Gary Bertini, 本名シュロイメ・ゴレルガント, 1927年5月1日 - 2005年3月17日）は、イスラエルを代表する指揮者であり、作曲家としても才能を発揮しました。彼はルーマニア王国領であったモルドバのキシナウ近郊で生まれ、幼少期にパレスチナへ移住しました。

テルアビブでヴァイオリンを学び始めたベルティーニは、その後ヨーロッパに渡り、ミラノのヴェルディ音楽院、パリ音楽院、エコールノルマル音楽院、ソルボンヌ大学で音楽を深く学びました。ナディア・ブーランジェ、オリヴィエ・メシアン、アルチュール・オネゲルといった著名な音楽家たちに師事し、作曲と指揮の両方を習得しました。

1958年、イスラエルに帰国後、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団でプロの指揮者としてのキャリアをスタートさせました。1960年にはイスラエル・フィルの日本公演に帯同し、初来日を果たしました。1970年代にはイギリスを拠点に活動し、1981年にはデトロイト交響楽団の音楽顧問に就任、さらに1983年にはケルン放送交響楽団の首席指揮者となりました。ケルン放送響の就任時には「10年以内にベルリン・フィルに匹敵するオーケストラにする」という大胆な目標を掲げ、楽団員を鼓舞しました。

ベルティーニの指導のもと、ケルン放送響は着実にレベルアップを遂げ、マーラーの交響曲全集の録音も行いました。この全集は、一部が東京のサントリーホールで録音されるなど、彼らの音楽的成果が後世に遺されています。特に交響曲第3番や第5番は名演として知られています。

1978年には、その功績が認められイスラエル賞を受賞しました。ケルンでの活動と並行して、1987年にはフランクフルト歌劇場の総監督に就任しましたが、劇場当局との意見の相違から3年で退任しました。1991年にはケルン放送響のポストも退き、1994年から1995年にかけてイスラエル歌劇場の監督を短期間務めました。1995年からはパリ・オペラ座の指揮者として活躍し、1998年には1981年の初客演以来関係を深めていた東京都交響楽団の音楽監督に就任しました。2000年からは、ケルン時代に続く2度目のマーラー・チクルスに取り組みました。

2005年4月には東京都響の常任指揮者を退き、桂冠指揮者に就任することが予定されていましたが、その直前、テルアビブで77歳で亡くなりました。

ベルティーニは、モーツァルト、ベルリオーズ、マーラー、ラヴェル、ストラヴィンスキー、ウェーベルンなど、幅広い作曲家の作品を録音しました。特にマーラーの交響曲は彼の代表的なレパートリーであり、その演奏は今もなお高く評価されています。

もう一度検索