ガルフ・エア072便墜落事故

ガルフ・エア072便墜落事故の概要

2000年8月23日、ガルフ・エア072便（エアバスA320-212、機体記号A4O-EK）は、エジプトのカイロからバーレーンへ向かう予定でした。離陸後の巡航飛行は順調でしたが、バーレーン国際空港への着陸進入中に事故が発生しました。

当初、072便は滑走路12への着陸を予定していましたが、滑走路手前1海里の地点で、パイロットは高度と速度が速すぎることに気づき、ゴーアラウンド（着陸復行）を決定しました。高度と速度を調整するため、左旋回を開始。滑走路の延長線上を通過する際、パイロットは管制塔に着陸の意思を伝えました。管制官は072便に対し、2,500フィート (760 m) まで上昇し、針路300度へ旋回するよう指示しました。

072便は機首を5度上げ、高度1,000フィート (300 m) まで上昇を開始しましたが、その直後、突然機首を15度下げて急降下しました。対地接近警報装置（GPWS）が作動し、機長がフラップ格納と機首上げを指示しましたが、間に合いませんでした。現地時間19時30分、072便は機首を6.5度下げ、速度280ノット (520 km/h)で海面に激突しました。この事故により、乗客135名と乗員8名の合計143名全員が死亡しました。

事故原因の詳細

事故調査の結果、事故原因はパイロットが空間識失調に陥ったことによる誤操作と判明しました。

事故当時、夜間の洋上飛行であり、パイロットは地上の目標物を確認しづらく、水平感覚を喪失しやすい状況でした。ゴーアラウンド後、パイロットは管制官の指示に従い上昇していたはずでしたが、機長が空間識失調に陥り、誤って操縦桿を押し込み、機首を下げて降下させてしまったと考えられています。機長は対地接近警報装置が作動するまで降下していることに気づかず、気づいた時にはすでに高度が低すぎて、墜落を回避することができませんでした。

空間識失調は、パイロットが自身の体の位置や動き、姿勢を正確に認識できなくなる現象です。特に夜間や悪天候時など、視覚情報が乏しい状況下で発生しやすく、航空事故の重大な原因の一つとして知られています。今回の事故も、夜間の洋上という特殊な状況が空間識失調を誘発し、悲劇的な結果につながったと考えられます。

もう一度検索