ガンコウラン

ガンコウラン（岩高蘭）

ガンコウラン（学名：Empetrum nigrum var. japonicum）は、ツツジ科に分類される常緑の小さな低木です。かつては独立したガンコウラン科に位置づけられていましたが、最新のAPG植物分類体系ではツツジ科ツツジ亜科の一員とされています。この植物は雌雄異株、つまりオスとメスの花が別の株につく性質を持っています。

特徴

ガンコウランの最も特徴的な形態は、その茎が地面を這うように伸び、そこから盛んに枝分かれすることです。この枝は上部が斜めに立ち上がったり、あるいは垂直に伸びたりします。茎には葉が非常に密生してつくため、地面を覆うような厚いマット状の群落を形成します。葉は互い違いにつく互生で、革のような質感の線形をしています。大きさは長さが4ミリメートルから7ミリメートル、幅が0.7ミリメートルから1ミリメートルほどになります。

花期は一般的に5月から6月にかけてです。高山に生育する植物の中では開花が比較的早い方ですが、他の植物に紛れて咲くため、見つけ出すのが難しいことがあります。雄花は花弁の長さが約2.5ミリメートル、花糸の長さが約7.5ミリメートルです。一方、雌花の花弁の長さは約2ミリメートルと、雄花に比べてやや小さいのが特徴です。

花の後には果実が実ります。果実は直径6ミリメートルから10ミリメートルの黒い球形をしており、「クロウベリー」とも呼ばれ、食用が可能です。この果実は単に食べられるだけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素を豊富に含んでおり、貴重な食料源となります。集めてジャムなどに加工して利用する人もいます。また、鳥類にとっても重要な餌となります。

分布と生育環境

日本国内では、北海道全域および本州の中部地方から北部の高山帯にかけて分布しています。主な生育環境は、日当たりの良い高山の岩場や、海岸近くの開けた場所です。国外においては、アジアの千島列島、樺太（サハリン）、朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部、カムチャツカ半島といった地域に広く分布しています。

近縁種・品種

ガンコウランの基本種としては、セイヨウガンコウラン（Empetrum nigrum L. var. nigrum）があります。セイヨウガンコウランはガンコウランに比べて葉の幅がやや広く、主にヨーロッパに広く分布しています。また、果実が白色になるシロミノガンコウラン（Empetrum nigrum L. var. japonicum K. Koch f. albicarphum Honda ex H.Hara）という品種も存在します。

もう一度検索