ガンマプロテオバクテリア綱

ガンマプロテオバクテリア綱（Gammaproteobacteria）

ガンマプロテオバクテリア綱は、真正細菌の大きな分類群であるプロテオバクテリア門（Pseudomonadota門）に属する主要な綱の一つです。この綱に含まれる細菌は、細胞壁の構造に特徴があり、グラム染色と呼ばれる手法で染色した際に赤く染まる、いわゆるグラム陰性菌に分類されます。

特徴

この綱には、人間社会や医療において非常に重要な役割を果たす、あるいは影響を及ぼす細菌が多く含まれています。代表的な科としては、腸内細菌科（Enterobacteriaceae）、ビブリオ科（Vibrionaceae）、シュードモナス科（Pseudomonadaceae）などが挙げられます。

特に、ヒトに感染する病原菌が多く知られています。例えば、食中毒や腸炎、さらには腸チフスといった重篤な感染症の原因となる*サルモネラ属菌（Salmonella spp.）、歴史的に多くの命を奪ったペスト菌（Yersinia pestis）、激しい水様下痢を引き起こすコレラ菌（Vibrio cholerae）、院内感染や日和見感染の原因となる緑膿菌（Pseudomonas aeruginosa）、そして日常的な食中毒の原因の一つである大腸菌（Escherichia coli）などが、このガンマプロテオバクテリア綱に属しています。

また、植物に病気を引き起こす重要な植物病原菌も含まれます。例えば、ミカン類に潰瘍病を引き起こすことで知られるXanthomonas axonopodis pv. citri、キウイフルーツに大きな被害を与えるPseudomonas syringae pv. actinidiae、ブドウなど多くの植物に感染して病気を引き起こすXylella fastidiosaなどがあります。

病原性を持つものだけでなく、環境中で独特な代謝を行う細菌も存在します。例えば、クロマチウム属（Chromatium）の一部の種は光合成細菌であり、通常の光合成で水を利用する代わりに、硫化水素を酸化してエネルギーを得て、硫黄を排出するという特殊な代謝を行います。さらに、この綱の多くの細菌は、メタンガスを酸化してエネルギーを得るメタン酸化細菌でもあります。これらのメタン酸化細菌の中には、深海の熱水噴出孔周辺に生息するチューブワームなどの無脊椎動物と共生関係を築いているものも確認されています。

下位分類（目）

ガンマプロテオバクテリア綱は、その多様性を反映して、いくつかの目に分類されています。細菌名の命名に関する国際的な規範であるIJSEM（International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology）リストに正式に承認されている目、および現在承認待ちまたは候補となっている目が存在します（2024年7月現在）。

IJSEMに正式承認されている主な目:

アシディフェロバクター目 (Acidiferrobacterales)
エアロモナス目 (Aeromonadales)
アルテロモナス目 (Alteromonadales)
アレニセラス目 (Arenicellales)
ベギアトア目 (Beggiatoales)
カルディオバクテリウム目 (Cardiobacteriales)
セルビブリオ目 (Cellvibrionales)
クロマチウム目 (Chromatiales)
エンテロバクター目 (Enterobacterales)
Immundisolibacterales
レジオネラ目 (Legionellales)
ライソバクター目 (Lysobacterales)
メチロコックス目 (Methylococcales)
ネブスキア目 (Nevskiales)
オセアノスピリルム目 (Oceanospirillales)
オルバス目 (Orbales)
パスツーレラ目 (Pasteurellales)
シュードモナス目 (Pseudomonadales) - この綱のタイプ目です。
チオハロバクター目 (Thiohalobacterales)
Thiohalorhabdales
ビブリオ目 (Vibrionales)

IJSEMに未承認の候補となっている目:

"Candidatus Comchoanobacterales"
"Candidatus Competibacterales"
"Candidatus Foliamicales"
"Candidatus Johnevansiales"
"Candidatus Porifericomitales"
"Candidatus Porisulfidales"
"Candidatus Rariloculales"
"Candidatus Siderophilales"
"Candidatus Spongiifermentales"
"Candidatus Tethybacterales"

これらの目の分類は、継続的な研究によって更新される可能性があります。

系統発生

ガンマプロテオバクテリア綱は、系統発生的に非常に多様なグループであり、必ずしも単系統群（一つの共通祖先から派生したグループ）ではないことが、分子系統解析などによって示されています。そのため、一部の目や科は、この綱の中でさらに詳細な分類や配置の見直しが行われています。

より詳しい情報については、専門のデータベースや文献を参照してください。

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この文章は、公開されている情報を基に作成されており、研究の進展に伴い内容が変更される可能性があります。

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