ガンマヘルペスウイルス亜科

ガンマヘルペスウイルス亜科（Gammaherpesvirinae）

分類学上の位置づけ

ガンマヘルペスウイルス亜科（Gammaherpesvirinae）は、ウイルスの分類学において、エンベロープを持つ二本鎖DNAウイルスであるヘルペスウイルス科（Herpesviridae）に含まれる主要な亜科の一つとして位置づけられています。

ヘルペスウイルス科は、ウイルスの遺伝学的特徴、複製サイクル、宿主特異性、および細胞への感染様式といった様々な基準に基づいて、主に以下の三つの亜科に細分類されています。

1. アルファヘルペスウイルス亜科（Alphaherpesvirinae）
2. ベータヘルペスウイルス亜科（Betaherpesvirinae）
3. ガンマヘルペスウイルス亜科（Gammaherpesvirinae）

本稿で記述するガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスは、特にリンパ球や上皮細胞に対して親和性を持つ傾向があることが特徴の一つです。また、これらのウイルスは感染後に宿主の体内に長期にわたる潜伏感染を確立する能力を有しています。

ガンマヘルペスウイルス亜科に分類される属

現在、ウイルスの分類体系において、ガンマヘルペスウイルス亜科には複数の属（Genus）が識別され、分類されています。これらの属は、ウイルスの遺伝子配列情報や生物学的な振る舞いといった基準に基づいて区別されています。

具体的には、このガンマヘルペスウイルス亜科には、以下の主要な属が確認されています。

リンホクリプトウイルス属（Lymphocryptovirus）
ラジノウイルス属（Rhadinovirus）
マカウイルス属（Macavirus）
ペルカウイルス属（Percavirus）

これらの各属は、特定のウイルス種を包含しています。例えば、リンホクリプトウイルス属には、ヒトに感染するウイルスの中で最もよく知られているものの一つであるエプスタイン・バール・ウイルス（Epstein–Barr virus, EBV）が分類されています。EBVは、伝染性単核球症を引き起こす原因ウイルスとして広く認識されており、さらに一部の悪性腫瘍の発症との関連性も指摘されています。

また、ラジノウイルス属に分類されるヒトの重要なウイルスとしては、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス（Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus, KSHV）があり、これはヒトヘルペスウイルス8型（HHV-8）とも呼ばれます。HHV-8/KSHVは、特に免疫機能が抑制された患者において、カポジ肉腫や原発性体腔リンパ腫などの疾患の原因ウイルスとして同定されています。

上記以外にも、ガンマヘルペスウイルス亜科にはマカウイルス属やペルカウイルス属といった属が含まれており、これらの属には主にヒト以外の哺乳類や鳥類に感染するガンマヘルペスウイルスが分類されています。これらの動物由来のウイルスも、それぞれの自然宿主において様々な病態を引き起こす可能性がありますが、ヒトへの感染例や疾患との関連は、EBVやHHV-8に比べて稀であるか、研究が進んでいないものが多い現状です。

まとめ

以上のように、ガンマヘルペスウイルス亜科は、ヘルペスウイルス科の重要な構成要素であり、特にリンパ球などへの指向性や潜伏感染の能力といった生物学的特性を共有するウイルス群を含んでいます。この亜科には、ヒトの健康に significant な影響を与える代表的な病原体であるエプスタイン・バール・ウイルス（EBV）やカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス（HHV-8/KSHV）を含むリンホクリプトウイルス属やラジノウイルス属など、複数の distinct な属が分類されています。ウイルス学における分類体系は常に発展しており、新たなウイルスの発見や分子生物学的な知見の集積により、ガンマヘルペスウイルス亜科に関する我々の理解は今後も深化していくと考えられます。

もう一度検索