ガンマ補正

ガンマ補正：映像の明るさと色の魔法

ガンマ補正は、ビデオや静止画のシステムにおいて、輝度や色情報を符号化・復号するために用いられる、重要な非線形変換技術です。単純なべき乗則で表現されるこの操作は、人間の視覚特性に合わせたデータ処理や、データ量の最適化に役立っています。

ガンマ補正の仕組み

最も基本的なガンマ補正は、以下の式で表されます。

`Vout = AVin^γ`

ここで、`Vin`は入力値、`Vout`は出力値、`γ`はガンマ値、`A`は定数です。`A`が1の場合、`Vin`と`Vout`は通常0～1の範囲になります。

`γ < 1`の場合、この変換はガンマ圧縮と呼ばれ、入力値のダイナミックレンジを圧縮します。

ガンマ補正の目的

画像のガンマ符号化は、人間の明るさや色の知覚の非線形性を考慮して行われます。人間の目は、暗い部分の明暗差に比べて、明るい部分の明暗差には鈍感です。ガンマ符号化によって、人間の知覚特性に合わせたビット割り当てを行うことで、データ量を削減したり、伝送帯域幅を最適化したりすることが可能です。

ガンマ符号化されていない画像では、人間の目が判別できない高輝度部分に過剰なビットが割り当てられ、逆に暗い部分にはビットが不足しがちです。ガンマ符号化は、この問題を解決し、視覚的な品質を維持しつつデータ量を効率的に管理することを可能にします。

ブラウン管ディスプレイとの関係

歴史的には、ガンマ補正はブラウン管（CRT）ディスプレイの入出力特性を補正するために開発されました。CRTでは、電子銃の電圧と光の強度の間に非線形な関係がありました。ガンマ圧縮によって入力信号を補正することで、この非線形性をキャンセルし、目的の輝度を得ることができました。

しかし、現代のディスプレイでは、この目的は重要ではなくなっています。それでも、視覚品質を最大化するためにガンマ符号化は必要であり、ディスプレイの種類に関わらず、信号の視覚的品質を最適化するために使用されています。

数学的な詳細

sRGBなどの規格では、単純なべき乗則ではなく、より複雑な関数を使用しています。これは、0付近での無限大の傾きを回避するためや、より正確な人間の視覚特性への適合のためです。これらの関数では、ガンマ値は一定ではなく、入力値によって変化します。

一般化ガンマ

ガンマの概念は、べき乗則以外の非線形関係にも適用できます。「ポイントガンマ」は、特定領域での曲線の傾きとして定義され、対数軸でプロットした際の傾きとして視覚化できます。

写真フィルムにおけるガンマ

写真フィルムでは、露光量とフィルム濃度の関係を表すハッター＝ドリフィールド曲線の直線部分の傾きがガンマと呼ばれています。ネガフィルムでは一般に1未満、ポジフィルムでは1より大きくなります。

各種システムにおけるガンマ値

多くのコンピュータディスプレイシステムでは、約0.45のガンマで符号化され、2.2のガンマで復号されます。Macintosh（macOS 10.6以前）は、0.55の符号化ガンマと1.8の復号ガンマを使用していました。sRGB色空間は、単純なべき乗則ではなく、より複雑な関数を使用していますが、多くの範囲で2.2に近い復号ガンマ値を有しています。

テレビ放送では、ガンマ値はビデオ規格によって定義され、固定されています。

ガンマメタデータ

PNG、JPEG、TIFFなど、一部の画像形式では、画像のガンマ情報をメタデータとして保存できます。これにより、表示システムが自動的にガンマ補正を行うことができます。

ビデオディスプレイのべき乗則

ビデオシステムでは、「ガンマ特性」と呼ばれるべき乗則の関係が、符号化された輝度と実際の明るさの関係を近似します。この非線形な関係により、符号化された輝度の等間隔ステップが、主観的に等しい明るさのステップにほぼ対応します。

コンピュータでのガンマ補正

コンピュータでガンマ補正を行うには、画像ファイルのピクセル値、描画ソフトウェア、ビデオカード、モニターの各段階で調整を行うことができます。これらの要素が適切に調整されていれば、正確なガンマ補正が実現します。

モニターテスト

モニターのガンマ補正が適切に行われているかを確認するために、テストパターンを用いた簡単なテスト方法があります。このテストでは、各色のガンマ値を調整し、単色部分と市松模様部分が同じ明るさで表示されるようにします。

スケーリングとブレンディング

ガンマ補正は、画像のスケーリングやアルファブレンドなどの処理にも影響を与えます。これらの処理を行う際には、ガンマを考慮する必要があります。

用語解説

「強度」、「輝度」、「ルーマ」、「明るさ」などの用語は、文脈によって異なる意味を持つため、注意が必要です。ガンマ補正におけるガンマ値は、数学のガンマ関数とは異なります。

ガンマという用語の非推奨化

IEC 61966-2-1では、「ガンマ」という用語の使用を推奨していません。しかし、業界では広く使用されているため、本稿でも使用しています。

もう一度検索