ガーバーフォーマット

ガーバーフォーマット：プリント基板製造の業界標準

ガーバーフォーマットは、[プリント基板]の設計データと製造データをやり取りするための業界標準ファイルフォーマットです。配線パターン、ソルダーマスク、部品配置といった基板設計情報を、製造工程で使用可能なデータ形式に変換して伝達する役割を担います。

ガーバーフォーマットの歴史と進化

ガーバーフォーマットは、Gerber Systems社によって開発され、1979年には米国電子工業会(EIA)でRS-274-Dとして規格化されました。初期のRS-274-Dは、ベクトル式のフォトプロッターを制御するためのシンプルなASCIIフォーマットで、座標情報のみを記述し、形状情報は別途アパーチャファイルとして提供する必要がありました。このため、データ量が多く、人手による作業が多く必要という課題がありました。

これらの欠点を克服するため、拡張ガーバーフォーマットであるRS-274Xが開発されました。RS-274Xは、形状情報を含むためデータ量が削減され、自動化されたワークフローが可能になります。現在では、PCB業界における標準フォーマットとして広く普及し、RS-274-Dは推奨されなくなっています。

2014年には、Ucamco社（ガーバーフォーマットの管理・開発企業）がガーバーフォーマットに属性を追加する拡張を行いました。属性は、ファイルにメタ情報を付加することで、層の種類や部品情報などを明確に記述できるようになり、製造工程におけるデータの取り扱いやすさが向上しました。

RS-274-DとRS-274Xの違い

RS-274-Dは、ベクトル式のプロッターを制御する目的で設計されたため、形状情報を直接記述せず、アパーチャファイルという、人が読み解くことを前提とした外部ファイルを参照する必要がありました。このアパーチャファイルは標準化されておらず、設計者やEDAソフトウェアごとに異なる形式だったため、製造工程でのデータ処理に多くの手間がかかっていました。一方、RS-274Xは、形状情報をファイル自体に含むため、外部ファイルの必要がなく、自動化されたデータ処理が可能です。

ガーバーフォーマットの使用と注意点

ガーバーファイルは、EDAやCADソフトウェアを用いて作成されます。製造工程では、CAMシステムでガーバーファイルを処理し、基板製造に必要なデータを生成します。自動外観検査にも使用されます。ドリル情報は、通常はExcellonフォーマットを使用します。

RS-274Xは互換性が高いですが、CADソフトウェアによっては出力に不備がある場合があります。数値精度の不足による丸め誤差や、RS-274-D方式の塗りによるデータ処理の煩雑化などが発生する可能性があります。CADソフトウェアの解像度よりも、ガーバーファイルの解像度を高く設定することが重要です。

また、RS-274Xでは、ファイル名や拡張子で層の種類を区別することが一般的ですが、設計者やCADによっては独自の命名規則を使用している場合もあります。製造側は、全てのファイルを検査し、必要な情報を探し出す必要があります。拡張子で層の種類を示すことは、必ずしも好ましい方法ではありません。

ガーバーフォーマットの代替フォーマット

ガーバーフォーマットは、銅パターンなどの描画情報とドリル情報しか持たないため、ネットリストや部品情報といった設計情報を別途管理する必要があります。これに対し、より包括的な情報を管理できる代替フォーマットがいくつか提案されていますが、互換性の問題などからガーバーフォーマットを完全に置き換えるには至っていません。ODB++は、シェアを拡大しつつある代替フォーマットの1つです。

まとめ

ガーバーフォーマットは、長年に渡りプリント基板製造において標準的なファイルフォーマットとして利用されてきました。RS-274Xは高い互換性と自動化されたワークフローを可能にする一方、CADソフトウェアとの連携やデータ管理における注意点も存在します。代替フォーマットも登場していますが、ガーバーフォーマットは依然として広く利用されています。今後の技術革新によって、ガーバーフォーマットの役割や代替フォーマットの普及状況が変化していくことが予想されます。

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