CAM

CAM（コンピュータ支援製造）とは

CAM（Computer-Aided Manufacturing）は、コンピュータ支援製造の略で、製品の製造を効率化するためのシステムです。CAD（コンピュータ支援設計）で作成された3Dモデルなどの形状データを基に、NC（数値制御）工作機械を動かすためのNCデータを作成します。このNCデータは、工具の動きや速度、切削条件などの情報を含み、実際の製品加工を自動化するために不可欠です。

広義には、テキストベースの自動プログラミングシステムなど、NCデータを出力するシステム全般をCAMと呼ぶこともあります。

CAMの概要

従来のNCデータ作成は、図面から工具経路を人が手作業で算出し、座標値をテキストデータで記述する必要がありました。しかし、CAMシステムは、これらの作業をコンピュータ上で自動化し、NCデータ作成の効率を大幅に向上させました。CAMは、工具経路の自動生成、工具情報管理、切削条件設定など、様々な機能を提供します。

CAMの歴史

CAM黎明期

1956年にマサチューセッツ工科大学で開発されたAPT（アプト）と呼ばれるNCプログラム言語が、CAMの始まりとされています。日本では1972年に国産のNCプログラム言語Lanc（ランク）が開発されました。これらの初期のシステムは、言語ベースのコンパイラとして実装されており、WYSIWYG（見たまま編集）ではありませんでした。現在でもAPT言語は、一部のCAMシステムでCLファイルとして使用されています。

CAM運用環境の変遷

初期のCAMシステムは、Unix環境で動作することが一般的でした。これは、CAMの計算処理には安定したマルチタスク性が必要だったためです。しかし、Windows系コンピュータの性能が向上するにつれて、Windowsへの移行が進み、現在ではほとんどのCAMシステムがWindowsをプラットフォームとしています。また、近年ではLinux環境での展開も始まっています。

CAMの種類

CAMシステムは、加工内容によって様々な種類に分類できます。

切削加工CAM

面穴加工CAM: ドリルやエンドミルを使用して、穴あけや平面加工を行うためのNCデータを作成します。
輪郭加工CAM: エンドミルを使用して、製品の曲線輪郭を加工するためのNCデータを作成します。
表面加工CAM: ボールエンドミルを使用して、曲面を加工するためのNCデータを作成します。
旋盤用CAM: 旋盤を使用して、回転体形状を削り出すためのNCデータを作成します。

その他のCAM

切削加工以外にも、レーザー切断、ワイヤー放電、布や紙の裁断など、様々な加工に対応したCAMシステムが存在します。

CAMシステムの区分

2次元CAM: 2次元のCADデータに基づいて、高さ一定のNCデータを作成します。
2.5次元CAM: 2次元CADデータに高さ情報を加え、穴や平面の加工に対応したNCデータを作成します。
3次元CAM: X軸、Y軸、Z軸を同時に制御するNCデータを作成します。
5軸加工CAM: 直交3軸に加えて、回転軸を制御するNCデータを作成します。

CAMの機能

CAMシステムには、NCデータ作成を効率化するための様々な機能が搭載されています。

工具経路自動生成

加工内容に合わせて、工具の経路を自動的に生成します。穴あけ、輪郭加工、平面加工、曲面加工など、様々な加工に対応した経路生成機能があります。

フィーチャー機能

CADデータから穴やポケット形状などの特徴的な形状を自動で認識し、工具経路を生成します。工法テーブルと組み合わせることで、効率的な加工が可能です。

工具テーブル

使用する工具の種類、長さ、直径、刃先形状などの情報を登録します。工具送り速度、回転数、切削油の要否などの情報も登録できます。

工法テーブル

工具と経路生成方法を1つの工法として登録します。例えば、ネジ穴加工では、センタードリル、下穴、座グリ、タッピングなどの一連の加工を登録できます。

ポスト（工作機）設定

出力先の工作機械に適合したNCデータを出力するための情報を設定します。機械の種類、CNCの種類、ATC（自動工具交換装置）のポット数など、様々な設定項目があります。

NCデータ編集

複数のNCデータを統合したり、加工順序を並び替えたりします。また、工具交換命令を挿入して、複数の工具を使用するNCデータを生成することもできます。

干渉チェック・加工シミュレーション

工具やホルダが被削材や治具に接触しないかをチェックします。また、工具経路をシミュレーションすることで、加工結果を事前に確認できます。

加工途中形状生成

NCデータに基づいて、加工途中の形状を再現します。干渉チェックや加工残りの確認に役立ちます。

NCデータフォーマット機能

工具経路データを、テキスト形式のNCデータフォーマットに変換します。GコードやMコードなどの制御指令、工具補正アドレス、送り速度、回転数などの情報が付加されます。

CADインターフェース

CADデータを取り込むためのインターフェースです。IGES、STEPなどのファイル形式に対応しています。また、主要なCADシステムとダイレクトに連携できるものもあります。

主なCAMソフトウェア

以下は、主なCAMソフトウェアの一覧です。

ダッソー・システムズ: CATIA、SOLIDWORKS CAM
シーメンス: NX、Solid Edge、Solid Edge CAM Pro
ヘクサゴン: AlphaCAM、EdgeCAM、Machining Strategist、PEPS、SurfCAM、VISI、WorkNC
Autodesk: Fusion 360、Fusion 360 with PowerMill、Fusion 360 with FeatureCAM、Inventor CAM
HCL Technologies: CAMWorks
OPEN MIND Technologies: hyperMILL
Tebis Technische Informationssysteme: Tebis
CNC Software: MasterCAM
3D Systems: Cimatron、GibbsCAM
PTC: PTC Creo
CGTech: VERICUT
Missler Software: TopSolid
SPRUT Technology: SprutCAM、SprutCAM Robot
Scanvec Amiable: FlexiSign
Gravotech: TYPE EDIT、LASERTYPE
MecSoft Corporation: VisualCAD/CAM、RhinoCAM、VisualCAM for SOLIDWORKS、AlibreCAM、FreeMill
C&G Systems: CAM-TOOL
SolidCAM: SolidCAM
NTTデータエンジニアリングシステムズ: Space-E
BobCAD-CAM: BobCAD-CAM
QARM Pty Ltd: OneCNC

関連項目

工作機械
* CNC

出典・脚注

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