キジバト

キジバト：都市に生きる野鳥

キジバト(Streptopelia orientalis)は、ハト目ハト科に属する鳥類です。別名ヤマバトとも呼ばれ、全長約33cmの体長を持ちます。雌雄同色で、茶褐色から紫灰色の体羽に、黒と赤褐色の鱗状模様が翼に特徴的に現れます。この模様は英名「Turtle Dove」の由来にもなっています。また、首の側面には青と白の美しい横縞模様が見られます。さらに、目の周囲は赤く裸出しているのが特徴です。和名は、キジの雌の体色に似ていることに由来しています。

生息地と生態

キジバトは、平地から山地にかけての明るい森林に生息していますが、近年は都市部でも頻繁に観察されています。樹上に小枝などを組み合わせた皿状の巣を作り、繁殖活動を行います。古巣の再利用や、人工建築物への営巣も珍しくありません。そのため、野良猫などの捕食対象となるリスクも高くなっています。

キジバトの鳴き声は非常に特徴的で、古くから「デーデー　ポッポー」や「ホーホー　ホッホー」と表現されてきました。早朝にさえずることが多く、個体差はありますが、通常5音で構成されます。4音でさえずる個体も確認されています。音程やテンポも個体によって異なり、音楽的な表現を用いると「クーク　グッググー」や「ホーホ　ホッホホー」といった表現も可能です。

食性は雑食性で、果実や種子を主な餌としますが、昆虫類、貝類、ミミズなども食べます。繁殖期は春から夏が中心ですが、ほぼ周年繁殖し、一度に2個の卵を産みます。抱卵期間は約15～16日で、夜間はメス、昼間はオスが抱卵する分担体制をとっています。雛鳥は約15日で巣立ちます。通常はつがい単位で生活しますが、繁殖に失敗した場合、そのシーズンでつがいを解消することもあります。冬季には、繁殖期以外個体が群れを形成することもあります。

分布と亜種

キジバトは、ユーラシア大陸東部と日本に分布しています。日本では北海道、本州、四国、九州に生息し、北海道や本州北部では冬季に南下する夏鳥としての側面も持ちます。亜種として、リュウキュウキジバト(S. o. stimpsoni)が知られています。

人間との関わり

日本では、鳥獣保護法により狩猟鳥に指定されています。かつては山岳地帯に生息し、人里離れた場所でひっそりと暮らしていましたが、1960年代以降、都市部での銃猟が制限されたことをきっかけに、人間の存在をそれほど恐れることなくなり、1970年代には街路樹や建造物にも営巣するようになりました。現在では、都市部でも普通に見られる身近な鳥となっています。ただし、外来種であるカワラバトに比べると、警戒心ははるかに強いと言えます。

キジバトは、農作物への被害も及ぼす場合があります。例えば、耕地に蒔かれた豆などの種子を食べることで、農家にとってはある程度の害鳥となる可能性も秘めています。

一方で、キジバトは、日本の切手の意匠としても用いられており、1963年、1992年、2007年にはキジバトをデザインした切手が発行されました。美しい鳥の姿は、人々の心を魅了し続けています。

参考文献

日高敏隆監修 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲編 『日本動物大百科 第4巻 鳥類II』 平凡社、1997年
叶内拓哉、阿部直哉、上田秀雄『山渓ハンディ図鑑７ 新版 日本の野鳥』山と溪谷社、2014年

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