キスマヨ

キスマヨ：ソマリア南部の歴史と現状

キスマヨ（Kismayo）は、アフリカ大陸東部、ソマリア南部のジュバ川河口付近に位置する港湾都市です。モガディシュから南西約528キロメートルにあり、ジュバランドと呼ばれる地域の商業の中心地として機能しています。バナナや皮革などの輸出港としても知られています。

キスマヨの地理と民族

キスマヨは、スワヒリ文明圏とソマリ族の遊牧民地域が接する境界に位置しています。比較的新しい都市で、1872年にザンジバルのスルタンによって建設されました。住民はソマリ族が中心ですが、バナディリ人、ソマリ・バントゥー、ブラワ人、バジュニ人、インド系など、多様な民族が共存する、ソマリアの中でも特異な都市です。

キスマヨの歴史

中世から近世にかけて、キスマヨは小さな漁村でした。アジュラーン国、ゴブローン王国といった勢力の影響下に置かれ、ジュバ川を利用した農業が行われていました。19世紀にはザンジバル・スルタン国の支配下に置かれ、都市としての基盤が整備されました。ハルティ族など、ソマリ族の一部の氏族も移住し、地域社会を形成していきました。

1890年にはイギリスの保護領となり、その後イタリア領となりました。イタリア領ソマリランド時代には主要都市として発展し、貿易の中心地として機能していました。第二次世界大戦後、イタリア信託統治領ソマリアとなり、1960年にソマリア独立を迎えました。独立後にはアメリカの影響が強い都市でしたが、ソマリア内戦により、その後の歴史は激動の連続でした。

ソマリア内戦とキスマヨ

1991年に始まったソマリア内戦は、キスマヨにも大きな影響を与えました。様々な勢力が支配権を争い、そのたびにキスマヨの情勢は大きく変化しました。マジェーテーン氏族とマレハン氏族といった、ダロッド氏族内の対立が特に深刻でした。

内戦初期にはソマリ愛国運動やモハメド・サイド・ヘルシ・モルガン（モルガン）の影響が強かった時期もありましたが、アメリカ海兵隊や国連軍の介入、撤退を経て、モルガンが一時的に支配権を握りました。その後、ソマリ軍（後にジュバ渓谷連合、南西ソマリアと改称）の支配下に入り、ハッサン暫定政権の統治権は及ばない状態が続きました。

2006年にはイスラム法廷会議がキスマヨを制圧しましたが、エチオピア軍の介入により、ソマリア暫定連邦政府が一時的にキスマヨを掌握しました。しかし、エチオピア軍の撤退後、再び不安定な状況となり、マレハン氏族が支配権を握る時期もありました。この頃にはソマリア沖の海賊の拠点の一つにもなっていました。

アル・シャバブ支配とソマリア政府の復帰

イスラム法廷会議の分裂後、台頭したアル・シャバブは2008年から2012年にかけてキスマヨを支配しました。アル・シャバブは過激な政策を展開し、歴史的建造物の破壊やラジオ局の閉鎖、少年少女への軍事訓練などが行われたと伝えられています。

2011年のケニア軍のソマリア侵攻を機に、ソマリア政府軍とケニア軍はアル・シャバブへ攻勢をかけ、2012年9月29日、アル・シャバブはキスマヨから撤退しました。その後、ソマリア政府軍がキスマヨの支配権を確立し、ラスカンボニ軍の指導者マドベがキスマヨの政治指導者となりました。しかし、マドベはジュバランドとしての高度な自治を要求しており、ソマリア中央政府との関係は依然として複雑な状況です。

キスマヨの経済と社会

キスマヨの経済は港湾機能に大きく依存しています。内戦前は肉の缶詰工場、皮革工場、魚工場などがありましたが、内戦により被害を受けています。内戦中も賃金は上昇していましたが、物価上昇も激しく、市民生活は困難を極めていました。穀物生産量は7億8千万トンと推定されています。

キスマヨにはキスマヨ空港があり、ソマリア空軍の訓練基地として利用されていた過去があります。内戦で破壊された後、修復され再開されました。また、大きなドックを備えた港湾施設があり、ソマリア海軍やソビエト海軍、アメリカ合衆国によって利用、改修されてきました。

教育面では、キスマヨ大学などの教育機関があり、ソマリアの中でも教育水準は比較的高いと言えるでしょう。

キスマヨの気候

キスマヨは熱帯気候で、年間を通して気温が高く、季節モンスーンの影響を受けます。雨は少なく、旱魃に見舞われることも多いです。雨季（グー）は4月から6月です。

キスマヨの現在と未来

キスマヨは、ソマリア内戦とアル・シャバブ支配という苦難の歴史を経験しましたが、現在ではソマリア政府の支配下にあります。しかし、ジュバランドの自治問題や、政治的不安定さなど、課題は依然として残されています。キスマヨの未来は、ソマリア全体の平和と安定に大きく依存していると言えるでしょう。今後の発展に期待しつつ、その歴史と現状を理解することは、ソマリアを理解する上で不可欠です。

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