キネコ

キネコとは

キネコ（Kineco）とは、テレビ受像機の映像、またはビデオ映像をフィルムに変換、またはその逆を行う作業、あるいはそのために用いられる機器を指します。キネレコとも呼ばれることがあります。

元々は「キネスコープ・レコーダ（Kinescope Recorder）」という名称で、テレビ映像（NTSC方式の場合、毎秒30フレーム）をフィルム（24フレーム）に変換する装置が「キネ・レコ」「キネコ」と短縮されて呼ばれるようになりました。イギリスでは「Telerecording」、アメリカでは「Kinescope」と呼ばれています。Kinescopeは元々、ブラウン管の商標名でした。

キネコの概要

キネコの基本的な原理は、RGB各色を割り当てた3台のモノクロテレビ受像機の映像を、ダイクロイックミラーで合成し、それをフィルムカメラで撮影するというものです。1956年にVTR（ビデオテープレコーダー）が実用化されるまでは、テレビ映像を録画する唯一の手段でした。VTRが登場した後も、ビデオテープが高価であったため使い回されることが多く、1960年代までの生放送やVTR収録によるテレビ番組で、現在まで残っているものは、キネコによって複写されたものがほとんどです。

NHKでは1954年にGPL製の装置を用いて舞台中継の録画を行ったのが初の事例であり、1964年の東京オリンピックに際してはRCA製の録画機が導入されました。カラーキネコは、1966年11月にNHKで初めて導入され、1968年4月にはTBS、同年中にはフジテレビでも導入されています。1970年代の終わりまでカラーキネコは広く活用されましたが、VTRの発達により1983年10月にNHKでの使用は休止されました。

近年では、映画制作においてもHDTVデジタルビデオカメラで撮影されたものが増えており、それらを35mmフィルムに変換する際には、レーザー光源を用いた高輝度・高解像度のレーザー・キネコが用いられることもあります。

フレーム変換による画質の低下

キネコでは、毎秒30フレームのテレビ映像を24フレームに変換して記録するため、実際に放送された映像と比較すると動きに若干の残像が生じます。また、1フレームごとの情報量についても、VTRは16ミリフィルム以下の解像度しか持たないため、画質の低下は避けられません。

テレシネが導入される前のフィルム作品では、VTRで撮影されたニュース映像をフィルムで撮影された映画やテレビ作品に挿入するケースや、フィルム編集では難しい描写をあらかじめVTRで制作するケースなどによく用いられました。

現在でも、キネコで録画された番組が放送されることがあります。しかし、それを見て「当時の放送の画質自体が悪かった」と考えるのは早計です。キネコは当時の技術的な制約の中で、可能な限り映像を保存するための重要な手段でした。

キネコCM

かつて日本国内では、全国に散らばるテレビ局に配信するテレビCMのコピー（ダビング）にもキネコが活用されていました。2000年ごろまでは、地方局でキネコによってコピーされたCMが見られました。前述のとおり、フレーム変換が起こるだけでなく、サウンドトラックもコピーするため、画質・音質ともに原版よりも劣化してしまいます。技術が向上し、VTRでのコピーが用いられるようになると徐々に使われなくなり、地デジ化が完了した現在ではキネコCMは過去のものとなっています。

関連技術

テレシネ：フィルム映像をビデオ映像に変換する技術
フィルムレコーディング：デジタル映像をフィルムに記録する技術
東通ecgシステム：放送局向けの映像制作システム
デジタルシネマ：デジタル技術を用いた映画制作
ポストプロダクション：映画やテレビ番組の撮影後の編集作業全般
映画用語：映画制作における専門用語
シネアド：映画館で上映される広告
キャプチャ (録画ソフト)：PCなどで映像を録画するためのソフトウェア

外部リンク

* レトロ番組の録画技術について

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