キノベス!

キノベス！

「キノベス！」は、国内有数の書店チェーンである紀伊國屋書店が主催する、年間を通じて最もおすすめしたい書籍を選び出す一大企画です。2003年にスタートして以来、毎年欠かさず実施されており、特に小説をはじめとする文芸作品を中心に、その年の優れた30冊を選出し、年末の12月下旬に発表しています。

この企画は、年末に発表されるミステリー小説の各種ランキング（例えば「週刊文春ミステリーベスト10」や「このミステリーがすごい！」など）と並び称されることが多く、熱心な読書家にとっては、その年の読書を締めくくり、新たな年の読書計画を立てる上で欠かせない恒例行事の一つとして親しまれています。

選出方法

「キノベス！」の最大の特徴は、その選考プロセスにあります。全国各地の紀伊國屋書店で働く全従業員からの推薦図書を広く募り、その膨大な候補リストの中から、社内に設置された「キノベス！選考委員会」が慎重な審議と複数回の投票を経て、最終的なベスト30を選び出します。これは、現場の書店員たちが一年間を通じて顧客と向き合い、数多くの書籍に触れてきた経験と知識に基づいた、まさに「プロが選ぶおすすめ本」と言えるでしょう。

発表と関連イベント

選ばれた「キノベス！」ベスト30は、年末の発表に続いて、翌年の2月には東京・新宿にある紀伊國屋書店新宿本店の紀伊國屋ホールにて盛大な贈賞式が開催されます。この式典では、上位入賞作品の作家や関係者が招かれ、受賞の喜びを分かち合います。また、贈賞式と併せて、上位受賞者によるサイン会が実施されることもあり、ファンにとっては作家と直接触れ合える貴重な機会となっています。

選ばれた作品の広報にも力が入れられています。ベスト10にランクインした作品は、読売新聞に掲載される企画広告や、運営事務局が特別に発行する無料配布の「キノベス！小冊子」の表紙を飾り、広く紹介されます。また、ベスト30に選ばれた全ての作品については、この小冊子の中に詳細な書評が掲載され、読者がそれぞれの本の魅力を深く理解するための手助けとなります。

関連企画

紀伊國屋書店は、「キノベス！」以外にも、読書の普及と啓蒙に資する様々な企画を実施しています。2011年にスタートした人文書の年間ベスト「紀伊國屋じんぶん大賞」や、2021年に始まった子ども向けの書籍ベスト「キノベス！キッズ」は、「キノベス！」と同時期に発表されることが多く、書店全体で多様なジャンルの書籍に光を当てようという姿勢がうかがえます。

これまでの歩み

2003年に始まった「キノベス！」は、20年以上の歴史の中で、常にその時代の文学界を賑わせた話題作や、隠れた名作に光を当ててきました。第1回で1位となった小川洋子氏の『博士の愛した数式』をはじめ、これまでに多くのベストセラー作家や注目の新鋭の作品が上位に選ばれています。選考対象は主に文芸書ですが、優れた翻訳作品や、書店員が「ぜひ読者に届けたい」と考えるノンフィクション、エッセイ、漫画、絵本といった幅広いジャンルの書籍がランクインするのも「キノベス！」の特徴です。多様な視点から選び抜かれた30冊は、読者にとって新たな発見や読書の楽しみを広げるきっかけを与えてくれます。紀伊國屋書店の現場の熱意が詰まった「キノベス！」は、今後も多くの読書家にとって重要な指針であり続けるでしょう。

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