キプロス航空284便爆破事件

キプロス航空284便爆破事件の概要

1967年10月11日、英国欧州航空284便は、ロンドン・ヒースロー空港からアテネ経由でニコシアへ向かう予定でした。デハビランド・コメット4B型機（機体記号:G-ARCO）で運航され、アテネで乗員交代と乗客の乗り降りが実施されました。アテネからはキプロス航空284便として、乗員7名、乗客59名を乗せ、午前2時41分に離陸しました。

午前2時58分、同僚機との交信が確認されたのを最後に、284便は消息を絶ちました。その後、地中海に墜落した残骸が発見され、乗員乗客66名全員の死亡が確認されました。

事件の背景

墜落した機体の残骸は広範囲に散乱しており、水深1600メートルの海底に沈んでいる部分も多く、回収は困難を極めました。しかし、回収された残骸や遺体の状況から、機体の欠陥ではなく、機内に仕掛けられた爆弾による人為的な破壊行為であることが判明しました。

機体の残骸は、北側と南側の2つの海域で大きく異なる状態で見つかりました。北側では燃料にまみれていない機体前方の構造物が、南側では油まみれの主翼付近の構造物が回収されました。また、遺体には急減圧の痕跡がないものもあり、空中分解ではなく、急降下中に機体が破損した可能性が示唆されました。

調査の結果、座席クッションに爆発による損傷があり、遺体の一体から爆風を直接受けた損傷が見つかったため、機内の座席下に高性能爆弾が仕掛けられたと断定されました。爆弾はおそらくファーストクラスの座席4Aまたは5Aの下に仕掛けられ、爆発によって操縦系統に重大な損傷が生じ、機体は制御不能となって急降下を始めました。その後、高度約15,000フィートで機体構造が耐えきれなくなり、機体が二つに分離したと推測されました。

犯行の動機と真相

犯行の動機については、被疑者が特定できなかったため不明です。しかし、いくつかの説が提唱されています。

その一つは、キプロス陸軍司令官（以前はテロ組織EOKAのリーダーだったとされる）を狙った暗殺テロ説です。司令官は直前に搭乗を取りやめたため、一般乗客のみが犠牲になったと考えられています。また、乗客2名が高額な生命保険に加入していたことから、保険金詐欺の可能性も疑われましたが、真相は解明されていません。

まとめ

キプロス航空284便爆破事件は、航空機の安全に対する脅威と、テロの無慈悲さを改めて浮き彫りにした事件です。犯人の特定には至らず、多くの謎が残されたままですが、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、教訓として語り継がれるべきでしょう。

参考資料

デイヴィッド・オーウェン、青木謙知監訳　『墜落事故』　原書房　2003年
デビッド・ゲロー 「航空事故」（増改訂版） イカロス出版 1997年
* Aviation-Safety.Net

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