キャスリーン・バトル

キャスリーン・バトルの音楽キャリアと日本での影響

キャスリーン・バトルは1948年8月13日に生まれたアメリカ合衆国のリリック・コロラトゥーラ・ソプラノ歌手であり、その繊細な声質と広範なレパートリーで知られています。彼女の音楽キャリアはオハイオ州ポーツマスから始まりました。バトルは7人兄弟の末っ子として生まれ、幼少期からその歌唱力に恵まれていましたが、当初は音楽家になる道を選ぶことは考えていなかったといいます。

彼女はシンシナティ大学音楽院で声楽を学び、1971年に修士号を取得しました。その後は音楽教師としてのキャリアを選びつつ、声楽を個人的に学び続けました。1972年に、シンシナティ交響楽団の首席指揮者であるトーマス・シッパーズのオーディションに挑み、そこでの存在感が評価され、イタリアのスポレト音楽祭でのパフォーマンスを果たしました。これは彼女のキャリアの大きな転機となります。

その後、1977年にはメトロポリタン歌劇場で『タンホイザー』の羊飼い役としてデビューを果たしました。1987年にはウィーンフィルのニューイヤー・コンサートに出演し、カラヤンと共演しながらヨハン・シュトラウス2世の「春の声」を披露しました。その後も音楽の世界で活躍を続け、2001年にはヴァンゲリスによる「Mythodea」に参加し、NASAの火星探査計画公式音楽として注目を集めました。また、2004年には中国の映画『LOVERS』のテーマ音楽も歌い、その幅広い活動を示しました。彼女はアメリカ国内の大学から6つの名誉学位を授与されています。

日本での知名度の向上

日本での彼女の知名度は当初は低かったものの、1986年に放送されたニッカウヰスキーのコマーシャルで「オンブラ・マイ・フ」を歌ったことで一躍知られる存在になりました。このCMは有名なオペラ演出家、実相寺昭雄の手によるもので、彼女の美しい声と映像が多くの人々の心を掴みました。1987年には同曲を収録したLP『オンブラ・マイ・フ/キャスリーン・バトル』がリリースされ、驚異的な売上を記録しました。同年5月にはCD版も発売され、当時のクラシック音楽市場においては異例のヒットとなりました。

特に、1987年5月の彼女の初来日公演の入場券は、販売開始からわずか20分で完売し、彼女の人気ぶりを物語っています。また、コマーシャル関連のレーザーディスクや来日記念コンサートの映像も評価され、日本でのファン層をさらに広げました。

音楽スタイルと評価

キャスリーン・バトルはそのリリック・コロラトゥーラの声質の美しさで知られています。彼女は特に清純で可憐な女性の役柄にふさわしい声を持ち、魔笛のパミーナやドン・ジョヴァンニのツェルリーナといった役を得意としました。多言語の歌曲も歌えるため、そのレパートリーは広範囲にわたり、歌のジャンルにおいても宗教曲やジャズに至るまで多岐にわたっています。

ただし、音楽活動において気難しい性格が影響し、仕事や共演相手とのトラブルがたびたび報じられました。特に、メトロポリタン歌劇場では彼女の強い態度が問題視され、一時は活動を制限されたこともあります。それでもなお、彼女はアンドレ・プレヴィンとの共演を通じてアルバム制作を行い、音楽界での存在感を保っています。

キャスリーン・バトルはその才能や人柄ゆえに多くの支持を受けており、これからもその美声を聴かせてくれることを期待されています。

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