キャズム

アルバム『キャズム』の概要

坂本龍一が2004年2月25日にリリースした『キャズム』は、彼のオリジナル・アルバムとしては1995年の『スムーチー』以来の作品です。このアルバムは、彼の得意分野であるクラシカルとエレクトリカルな音楽の融合を目指して制作されており、反戦のメッセージが深く根付いています。

反戦のテーマ

坂本は地雷除去キャンペーンなどを通じて反戦の姿勢を表明しており、またニューヨークに住んでいた彼は2001年の9.11アメリカ同時多発テロ事件を直接体験しました。この出来事は彼に強い影響を与え、その後のイラク戦争に対しても深い懸念を抱くことになります。『キャズム』では、戦争の理想と現実の間に横たわる様々な感情、すなわち怒り、悲しみ、挫折、不安、そして希望といったものが表現されています。

アルバムのリリース

このアルバムは2004年3月24日にアナログ盤としてもリリースされました。さらに、2006年には『キャズム』の楽曲をリミックスしたアルバム『ブリコラージュ』も発表されています。当初、坂本はアルバムの未使用素材を基に「Chasm 1.5」や「Chasm 2.0」という続編を考えていましたが、制作のタイミングが合わず実現には至りませんでした。

収録曲の紹介

日本盤収録曲

1. undercooled
作詞：MC Sniper / 作曲：坂本龍一
詳しくはシングル『アンダークールド』を参照。

2. coro
作曲：坂本龍一
アニメ映画『アップルシード』に使用。エフェクター「Kaoss Pad」を用いたドラムパターンのトラック。

3. War & Peace
作詞：アート・リンゼイ / 作曲：坂本龍一
多彩な楽器が重なるジョビン風の音楽。イラク戦争に対するメッセージが込められています。

4. CHASM
作曲：坂本龍一
アルバムのタイトル曲で、即興で編集された音のミニマルアプローチ。

5. World Citizen - I won't be disappointed / looped piano
作詞：デヴィッド・シルヴィアン
映画『バベル』でも使用された美しく静かなピアノのループが特徴。

6. only love can conquer hate
作曲：坂本龍一
曲名はマーヴィン・ゲイの歌詞に由来し、イラク戦争のデモ行進がインスピレーションになっています。

7. Ngo / bitmix
作詞・作曲：坂本龍一
ニューバランスのCF曲として使用されたボサノヴァ版が同時に制作されました。

8. break with
作曲：坂本龍一
タクシー運転手の声を用いた、シンプルな構成の作品。

9. +pantonal
作曲：坂本龍一
汎調性に基づくアプローチが使われています。

10. the land song - music for Artelligent City / one winter day mix
作曲：坂本龍一
ボサノヴァ風のリズムを持った楽曲。

11. 20 msec.
作曲：坂本龍一
ピアノの音を逆回転させた実験的なトラック。

12. laménto
作曲：坂本龍一
足音が印象的な短い楽曲。

13. World Citizen / re-cycled
作詞・作曲：デヴィッド・シルヴィアン
エレクトリックギターが印象的。

14. Seven Samurai - ending theme
作曲：坂本龍一
『Seven Samurai 20XX』のために作成されました。多様な楽器が参加。

『キャズム』は、反戦のメッセージを掲げつつも、音楽的には多様性に富んだ作品であり、聴く人々に深い感動を与え続けています。

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