キャットクイル

キャットクイル(Catequil、1990年5月22日 - 2014年1月9日)は、カナダで生まれ、イギリスで調教された競走馬です。その血統背景は非常に華麗で、半姉には日本の競馬界に大きな影響を与えた名牝パシフィカスがいます。父はストームキャット、母はデラウェアオークス(G1)優勝馬パシフィックプリンセスという良血を受け継いでいました。

競走馬としてのキャットクイルは、残念ながら目覚ましい活躍を見せることができませんでした。イギリスで2戦に出走したものの、4着と3着という結果に終わり、勝ち星を挙げることはありませんでした。しかし、その平凡な競走馬生活とは対照的に、繁殖牝馬として、彼女は日本の競馬史に燦然と輝く偉業を達成することになります。

1993年末、キャットクイルは繁殖牝馬として日本に輸入されます。彼女を購入したのは、GI競走を制する自家生産馬を夢見ていた日本の馬主、前田幸治氏でした。当時、パシフィカスから生まれたビワハヤヒデとナリタブライアンが、日本競馬界を席巻していました。ビワハヤヒデは菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念を制覇し、ナリタブライアンは皐月賞と日本ダービーを制覇するなど、まさに黄金時代を築き上げていました。キャットクイルはパシフィカスの半妹にあたるため、この血統背景に大きな期待が寄せられました。

前田氏は、ビワハヤヒデの調教師である浜田光正氏と相談し、キャットクイルの初年度の種付け相手としてブライアンズタイムを選びました。1995年、キャットクイルは初仔ファレノプシスを出産します。ファレノプシスは、桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯と、GI競走3勝を挙げ、名牝の仲間入りを果たしました。

その後、キャットクイルはフォーティナイナーとの配合でサンデーブレイクを生産しました。アメリカで調教されたサンデーブレイクは、ベルモントステークスで3着に入るなど活躍し、種牡馬としても成功をおさめ、イスパーン賞優勝馬ネヴァーオンサンデーなどを輩出しました。

数々の試練を乗り越え、キャットクイルは20歳を迎えた2010年、ディープインパクトとの配合でキズナを出産します。キズナは2013年の東京優駿（日本ダービー）を制覇し、種牡馬としても多くの重賞馬を輩出するなど、大きな成功を収めました。キズナは「父ディープインパクト、母父ストームキャット」という組み合わせの成功例として、日本の競馬界に大きな影響を与えました。

2014年1月9日、キャットクイルは永眠しました。競走馬としての成績は平凡でしたが、繁殖牝馬として、彼女はファレノプシス、キズナ、サンデーブレイクといった、数々の名馬を輩出し、日本の競馬界に多大なる貢献を果たしました。その血統は、現在も多くの競走馬に受け継がれ、輝きを放ち続けています。キャットクイルの偉業は、日本の競馬史に永遠に刻まれることでしょう。

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