牝馬

牝馬（ひんば）について

牝馬とは、メスの馬を指し、オスの馬は牡馬と呼ばれています。牝馬は繁殖や競技の重要な役割を果たし、また文化的側面でも多くの影響を与えています。この章では、牝馬の繁殖、生理、競技における役割、さらには文化的な意義について詳しく解説します。

繁殖における牝馬

牝馬は、他の多くの哺乳動物と同様、出産と子供の育成を担います。一般的には一度に一頭の仔馬を出産しますが、時には双子を産むこともあります。繁殖期は北半球では2月から7月、南半球では8月から1月にかけて訪れ、平均して23日ごとに発情と排卵が行われます。

牝馬の性周期は次の3段階に分かれています：
1. 無発情期 - 晩夏から冬にかけての間は繁殖を行わない時期。
2. 調整期 - 晩冬から初春にかけて、繁殖への準備を整える時期。
3. 繁殖適期 - 定期的に発情を繰り返し、交配が可能となる時期。

無発情期や調整期には牝馬は牡馬を遠ざけますが、繁殖適期に入ると、牡馬に接近し、交配の合図となる行動を示します。具体的には、フェロモンを含んだ尿を排出し、尻尾を上げて外陰部を開閉するウインキングという行動を行います。交配が成功すると、約327から357日間の受胎期間を経て、仔馬が出産されます。夜間に出産することが多い牝馬は、捕食動物からの襲撃を避けるため群れから離れる傾向があります。

出産後、母馬はその仔馬を舐めて濡れた羊水を取り除き、仔馬は30分から1時間内に自力で立ち上がり、その後母馬の元に合流します。この授乳期間は約1年続きます。特に、競走馬などの人間に管理されている牝馬は、6か月後に離乳されます。そして、出産から約9日後には再び発情し、交配が可能となります。

牝馬は約14%の確率で双胎妊娠することもありますが、双子の出産は流産や難産のリスクを伴うため、多くの場合は早期に堕胎されます。また、競走馬として認知される場合、牡馬との差による能力を補うため、2ポンドから5ポンドの負担を軽減する措置が取られています。

競走・競技における牝馬

牝馬は競馬や馬術競技においても重要な役割を果たします。競走馬としての牝馬は、牡馬と比べて体重や体高がわずかに低い傾向がありますが、それ以外の外見的な差はほとんどありません。特に日本では、競走成績や繁殖成績で優れた牝馬を「名牝」と呼び、その価値が認識されています。

競走馬を引退した牝馬は主に故郷の牧場に戻り、繁殖牝馬としての役割へと移行しますが、競走馬時代のストレスから非常に神経質な性格を持つことがあり、適応に時間がかかることもあります。

文化的・その他の用途

牝馬は、その乳から作られる馬乳酒「アイラグ」など、文化的にも重要な資源となっています。このアイラグは日本の乳酸飲料「カルピス」の開発のヒントともされています。また、妊娠中の牝馬の尿から採取されるホルモン薬「プレマリン」は、更年期障害や不妊治療に使用されます。

夜の牝馬と悪夢

英語の「Nightmare」は直訳すると「夜の牝馬」となりますが、ここでの「mare」は「夢魔」を指し、牝馬とは直接の関わりはありません。この言葉の混同は、1781年に発表されたスイス人画家ヨハン・ハインリヒ・フュースリーの作品『夢魔』に起因していると考えられています。

牝馬は繁殖や競技、文化において多様な役割を果たします。彼女たちの生態や行動、文化的な位置付けについて理解を深めることで、より豊かな知識を得ることができるでしょう。

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