キャブオーバー

キャブオーバー型トラック：その構造と世界的な普及

キャブオーバー型トラックとは、エンジンの上に運転席（キャブ）が配置されたトラックの構造形式です。英語ではCab over the Engine (COE)と呼ばれ、多くの場合、中型から大型トラックに採用されています。この形式は、エンジンと運転席をコンパクトに配置できるため、全長を短く抑えつつ、荷室を広く確保できるという大きなメリットがあります。

キャブオーバー型トラックの長所と短所

長所

優れたパッケージング: エンジンと運転席が垂直方向に積まれるため、全長を短く抑え、最大限の積載スペースを確保できます。これは、特に全長規制が厳しい地域において大きな利点となります。
高い視認性: 車体の前方が見やすく、狭い道や複雑な地形での運転が容易です。
効率的な貨物輸送: 短い全長で大きな積載量を実現できるため、輸送効率を高められます。

短所

衝突安全性の低さ: エンジンルームが小さく、衝突時の衝撃吸収能力が低い傾向があります。
空気抵抗の増加: ボンネットがないため、空気抵抗が大きくなり、燃費が悪化することがあります。
乗員の快適性の低さ: エンジンとサスペンションの振動や騒音が直接キャブに伝わるため、乗員の快適性が低い場合があります。
整備性の悪さ: エンジンにアクセスするために、運転席を大きく動かさなければならない場合があり、整備が複雑になります。
設計の自由度の制限: 省スペース設計のため、ボンネット型と比べて、エンジンのサイズやサスペンションの設計に制約が生じることがあります。

各国のキャブオーバー型トラック事情

北米

北米では、広大な国土と緩い全長規制を背景に、ボンネット型トラックが主流です。長距離輸送に適したセミトラクターはほぼ全てボンネット型です。キャブオーバー型は、近距離輸送用や特装車などに限られています。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、中型・大型トラックの多くがキャブオーバー型です。全長規制や速度制限の影響もあり、キャブオーバー型が広く受け入れられています。小型トラックでは、ボンネット型も一定数存在します。

オセアニア

オセアニアでは、キャブオーバー型とボンネット型の両方が使用されています。人口密度が低いため、北米と同様の傾向が見られるかと思われがちですが、ボンネット型に偏っているわけではなく、キャブオーバー型も広く普及しています。

ロシア・ウクライナ

ロシアやウクライナでは、歴史的な経緯からボンネット型トラックが多数派でしたが、近年はキャブオーバー型も増加しています。広大な国土と緩い全長規制、そしてアメリカの影響が、ボンネット型トラックの普及に大きく関わっています。

日本の小型車におけるキャブオーバー型

日本では、軽トラックや軽バン、ワンボックスカーなど、多くの小型商用車がキャブオーバーレイアウトを採用しています。また、かつては路線バスにも多く採用されていましたが、現在はリアエンジン方式が主流となっています。

まとめ

キャブオーバー型トラックは、その優れたパッケージングから、世界中で広く利用されています。しかし、衝突安全性や快適性、整備性といった面では、ボンネット型トラックに劣る点もあります。そのため、それぞれの地域や用途に応じて、最適なトラックが選択されています。近年では、技術革新によって、キャブオーバー型トラックの安全性や快適性が向上しており、今後もその普及は続くものと思われます。

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