キャメルバック式蒸気機関車

キャメルバック式蒸気機関車

キャメルバック式蒸気機関車は、アメリカで開発された独特な形状の蒸気機関車で、運転台がボイラーをまたがる配置にされています。このデザインは、機関士が前方をよく見えるように工夫されたもので、通常の蒸気機関車では視界に制約があったため、高い位置に設けられたウーテン式火室の影響を緩和するために生まれました。

概要

この蒸気機関車は、運転台が車体の中心部に位置しており、ボイラーの上に搭載されています。この設計により、機関士は前方の視界を確保しながら運転が可能になります。キャメルバック式という名称は「ラクダの背中」に由来し、この形状の機関車はアメリカ独自のもので、主に19世紀後半にアメリカの鉄道で採用されていました。1877年に初めて製造されたこの型の蒸気機関車は、ウーテン式火室を効果的に活用するために考案されたのです。

開発の背景

ウーテン式火室を開発したジョン・E・ウーテンは、1866年からフィラデルフィア・レディング鉄道での動力車を担当し、1876年からは総支配人として活躍しました。彼は無煙炭を効率的に燃焼させる火室を開発し、その結果、安価で豊富な燃料源を有効利用することが出来ました。この無煙炭は、かつては商業的価値が低かったため、ウーテンはこの資源の使用を模索しました。

彼は、広い火室を使って穏やかな通風で燃焼させることが理想だと考え、火室を動輪の真上に配置することにしました。しかし、その提案には運転台の位置をどのように配置するかという課題が残りました。従来の位置に運転台を設けると前方が見えなくなり、さらに高い位置に配置することもできませんでした。最終的に、キャメルバック式では機関士の運転台をボイラーをまたぐ形に設計することでこの問題を解決しました。

実用化と性能

最初のキャメルバック式蒸気機関車は、フィラデルフィア・レディング鉄道で製造され、その後多くの鉄道で採用されました。無煙炭を燃料として使用することで、運用コストを大幅に削減できる効果があり、年間2,000ドルの経費節減を実現しました。これは現在の価値に換算すると約30,000ドルとなります。各地の鉄道では、さまざまな形式のキャメルバック機関車が製造され、特に6輪以上の多様な車軸配置が見られました。

問題とその後の改造

キャメルバック機関車の利点とは裏腹に、安全性に関する問題もありました。運転台がロッドの真上にあるため、万が一ロッドが破損する事故が起これば、運転士に危険が及ぶ可能性が高かったのです。また、機関助士はボイラーの後部にむき出しの状態で作業しており、これも安全上のリスクを伴いました。1927年には州際通商委員会がこの形式の蒸気機関車の製造を禁止し、その後、多くのキャメルバック機関車は従来の設計に改造されたため、運転士の視界が確保できるようになりました。

現在も保存されているキャメルバック式蒸気機関車は少数であり、約3,000両のうち、ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道博物館をはじめとする数カ所にしか現存していません。これらの機関車は、アメリカの鉄道の歴史における重要な遺産となっています。

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